第4話 教祖の思い
「教祖様、本当に譲ってしまって良かったのですか? あんな貴重な物を!」
「良いのですよ! 子を想う母の気持ちに応えずなんの教えでしょうか? 信子さんは本当に私の教えを信じ精進なさいました。信子さんの息子を救うためなら、きっと他の信者も納得するでしょう」
私の名前は神木桃之介。
仙道を元にした新興宗教『桃の光』の教主をしています。
私達の教義の中に『桃信仰』があります。
桃とは不思議な果実で色々な物語で神聖視されています。
例えば桃太郎。
大きな桃から生まれた少年が鬼退治をします。
日本のおとぎ話に鬼を倒した物語はありますが、無数の鬼を退治した者は桃太郎しかいません。
他の物語の主人公は精々が一体の鬼を退けるか、倒すだけ。
桃太郎のみがお供を連れていたとは言え無数の鬼に勝利したのです。
桃から生まれた事から、恐らくは人ではなく仙人だったのでは無いか? それが私の考えです。
他には孫悟空の話。
天界の桃を食べた妖猿が不老不死と凄まじい力を手に入れました。
いずれにしても『桃』が絡んでいます。
この桃の不思議な力を信仰する事から出来たのが、私の『桃の光』です。
『桃を食べれば幸せになれる』それが我が教団の教えです。
ですが、此処だけ切り取られネットに晒させ『インチキ教団』の汚名を着せられました。
私達が言う桃は、普通の果実じゃありません。
天界にある桃の事を言っていました。
ですが、その事を持って弁解すると、嘘でないなら『その桃を寄越せ』といってきました。
私達は『本物の桃』を持っていません。
その桃を探し見つける事が我が教団の悲願なのです。
その事を言うと……ますます世間の風当たりは酷くなりました。
そんな、私達の話を聞き、真剣に救いを求めてきたのが信子さんでした。
『異世界に息子が連れ去られるから助けて欲しい』と切実な願いでした。
余りに荒唐無稽な話、流石に私も信じなかったのですが、切実に息子を想う気持ちに討たれ力を貸す事にしたのです。
私は『桃』を探す最中に手に入れた貴重な物を譲る決意をしたのです。
偽物か本物か分からない物も多いのですが、その説明をしても信子さんは欲しいと言い買っていきます。
信子さん相手だからこそ私は、教団の秘宝とも言える宝物をお譲りする事にしたのです。
『神剣 桃木の太刀』
これは、桃を探す途中で中国で見つけた物で、仙人が食べたとされる桃がなった木の枝からつくられたという木刀です。
眉唾と思うかも知れないが……この木剣は、木なのに異常に固く、名刀と名高い正宗や村正とぶつけたら正宗や村正の方が刃こぼれを起こしました。
東都大学の湯沢教授に調べて貰った所、恐らくはダイヤを越える硬度があり、尚且つ衝撃にも強い。
そこ迄は分かりました。
超常の剣、それしか分からない。
だが……強い事だけは明らかです。
他には……
『孫悟空の抜け殻』と言われた物の粉末。
猿の大妖と言われた孫悟空。
彼は三蔵法師との旅の功績を認められ、人間になる事が出来ました。
その際に分離されたという『妖怪だった部分』とされた物です。
元はミイラだったらしいですが、私が手に入れた時には既に粉末状態でした。
譲ってくれた商人が『神剣 桃木の太刀』を譲ってくれた人間の知り合いで『本物』だと保証してくれた物です。
なんでも、すこしずつ飲んでいくと強靭な体が手に入る。
そういう話でした。
「教祖様、本当にあれで異世界で通用するのでしょうか?」
「他にも貴重な物はかなり譲っりました。やれることはやりました……だが、流石の私も異世界で通用するかは分かりません……我々が出来るのは此処までです。あとは無事を祈る……それしか私たちには出来ません」
「ですね」
信子さんは、本当に子煩悩だった。
もし、孫悟空の抜け殻の粉末を信子さんが飲めば、病も治ったかも知れない。
だが、それすら惜しんで息子の為に生きた。
信子さんの思いが、きっとあの子を救う事になるだろう。
異世界に我々の助力が通用すれば良いな……そう私は願っています。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます