【第五章:フィナティピ王国篇】

第12話 『氷露柱・決戦(デシベル・オブ・シール)ー(前篇)ー』



【 導章 ― 封印の覚醒 】


 氷露柱が、空を割った。

 蒼光は夜を焦がし、雪原がまるで水面のようにうねり始める。

 マーカスたち三人は結界の中心でその光を受けていた。

 氷の大地が低く鳴動し、風が咆哮を上げる。


「……来ます。封印柱が完全に起きる!」

 リュゼが槍を構え、魔力を一点に収束させる。

 ユーコは詠唱を始めた。

 その声は祈りであり、戦いの歌でもあった。


 「星界の環よ、我らを護りたまえ――《惑星歌・ルクスアステリオン》!」


 光輪が彼女の周囲を旋回し、氷の結晶を星光へと変える。

 マーカスはその光を背に、双剣を交差させた。

 刃が鳴る。魂が燃える。



【 戦闘章 ― 氷露柱防衛機構起動 】


 氷壁の中心、そこに生まれたのは“守護巨像”。

 蒼銀の外殻をまとい、体内で氷結魔力を循環させる封印体。

 その名は――〈フロスト・リヴァイアス〉。


 巨像の腕が降り下ろされ、氷塊の雨が辺りを貫く。

 マーカスは即座に前に出た。

「ユーコ、後方で支援だ! リュゼ、右から抑えろ!」


 剣が唸る。

 《ソウルイータ》が閃き、落下してきた氷塊を一刀両断。

 断面から噴き出す魔力を吸収し、刃が蒼炎を纏う。


「命を喰らう……魂、貰ったぜ!」


 同時に左手の《イロゥドイータ》が光を放ち、

巨像の腕装甲へと斬撃を叩き込む。

 侵蝕が走り、蒼銀の鎧が音を立てて崩れる。


「隙を作った、行けリュゼ!」

「了解――《霧氷廻閃》!」


 リュゼの槍が液体金属の形態変化を起こし、

回転する氷輪を生み出した。

 その刃が風を裂き、巨像の脚部を切り裂く。

 瞬間、白霧が噴き上がり、敵の視界を完全に封鎖。


「風鎖撃、展開――!」

 風が鎖のように絡みつき、巨体の動きを止める。



【 共鳴章 ― 詩と刃 】


 ユーコは両手を胸に組み、星の詠唱を重ねる。

「聖天よ、星々の鼓動を紡ぎたまえ――

 《聖詠歌・エテルナ・ルクス》!」


 声が氷霜を震わせ、星光が雪原全体を包む。

 その光の中で、マーカスとリュゼの武装が共鳴する。

 蒼と紅が交わり、霜と炎が舞う。


 マーカスは跳び、空中で銃へ持ち替えた。

「《ブラッドソウル》――血弾、連射!」

 紅の弾丸が霧の中を貫き、敵の関節を撃ち抜く。

 続けざまに《デッドソウル》を展開。

「死弾、解放――《ネクロ・バレット》!」


 闇色の光線が走り、巨像の胸核を撃ち抜いた。

 霊体の波動が弾け、封印の魔核が露出する。


 リュゼが槍を回し、霧の中を突き抜ける。

「終局陣・氷槍連華――発動!」

 数十の氷槍が花弁のように咲き、巨像を包囲。

一点へと収束する光。

 轟音。

 蒼光の爆裂が雪原を飲み込んだ。



【 終結章 ― 封印解放 】


 爆風の中で、マーカスは落下しながら剣を交差させる。

 氷塵が舞い上がる。

 その奥で、巨像が崩れ落ちていった。

 胸の核から、封印の環が浮かび上がる。

 蒼く、静かな光。


 ユーコが手を伸ばす。

「……封印、安定化しました……!」

 氷露柱が再び光を収束し、結晶が透明に変わる。


 だが――その瞬間。

 大地の奥から低い声が響いた。


「なるほどなぁ。やはりお前たちか。」


 三人が振り返る。

 氷の裂け目の向こうに、黒衣の影が立っていた。

 仮面の男。

 その瞳が、紅に燃える。


「てめぇらよくも封印を……。

 だが、解いたのは俺にとっても好都合だ。」


 彼の周囲に黒い陣形が浮かぶ。

 マーカスは剣を構え直し、帽子を深く被った。

「今度は、隠れずに出てきやがったか。」

「ああ、マーカス・ロッティ。お前の“誓い”を壊す時が来た。」


 風が止み、氷原が震える。

 封印柱が背後で輝きを放つ。

 その光の中、三人の影が並び立った。


「――来い。

 次の一撃で、運命を決めようじゃねえか。」

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