【第五章:フィナティピ王国篇】

第2話 『白き槍影、流星のごとく』


 ――風が裂けた。

 魔銃剣士マーカス・ロッティの放った一閃が、黒き獣の顎を断ち割る。

 血煙が舞い、火花の中で彼は振り返った。


「後ろだ、ユーコ!」


「わかっています、マーカス――《リュミナ・サークル》!」


 白光の輪が広がり、彼女の詠唱に呼応して闇の群れが浄化されていく。

 しかし、そこへ新たな震動。

地を叩く重音と共に、裂け目の奥から“それ”が現れた。

 白銀の輝き――否、銀そのものが形を持ったような槍を携えて。


 黒い霧を纏う巨影を、一突きで穿つ。

 音もなく霧散する魔獣の群れ。


 そして、白銀の槍を携えた青年が歩み出た。


 陽光を浴びて、彼の髪が微かに蒼を帯びる。

 聖銀の穂先が静かに液化し、滴るように揺らめき――やがて彼の右腕へ戻る。

 腕輪の形で固まり、脈動のように淡く光った。


「……終わった、のか」


 低く息を吐く青年。

 マーカスは眉を上げた。

「おいおい、誰だいあんた。今の一撃、悪くなかったぜ」


「僕は――リュゼ。聖銀を継ぐ誓士団の一人です」


 その名に、ユーコの瞳がかすかに震えた。

 驚きと敬意が混じる声で、彼女は一歩進み出る。


「誓士団……やはり。古文書で読んだことがあります。

 ――失われたはずの聖銀の守護者たち」


「昔の話ですよ。もう団も、形だけです」


 リュゼの声音にはわずかな疲労が滲む。

 マーカスはデッドソウルを肩に担ぎながら笑った。


「そういう割には、ずいぶん生きのいい聖槍使いじゃねぇか」


 青年はかすかに微笑み、再び右腕の腕輪に触れた。

 その表面が波紋のように揺れ、やがて穂先を生む。

 聖銀の槍が再び顕現し、淡い鈴音のような音を響かせた。


「聖銀は意志を持ちます。……戦うべき時を、教えてくれるんです」


 彼の声には、静かな確信があった。

 その時、遠方の地平が震えた。黒い煙が昇り、唸るような咆哮が大地を渡る。


 マーカスは口の端を上げ、ソウルイーターの柄を握り直す。


「――まだ終わりじゃねぇな」


 リュゼは頷き、聖銀槍を構えた。

 白銀と黒鋼、聖と魔。

 二つの光が交わるとき、運命の糸が静かに動き出す。


 それは、聖銀と魔銃の出会いが告げる――新たなる封印戦の始まりだった。

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