【第四章:インデビト王国篇】「深層の審律」

第4話 『封印戦 ― 水環柱アクア・ラビリンス



【導入:静寂の潮声(マーカスの試練)】


 水の都ルベル=ハルマの地底には、永遠に揺らめく青い迷宮がある。

 その中心こそ、第四封印――水環柱アクア・ラビリンス

 時を超える潮の記憶と、沈黙の神々が眠る場所。


 マーカスたちは審律院の導師セルナに導かれ、

“通行許可”を与えられた特別な門をくぐる。

 冷たい空気、深層へ進むごとに、水音が遠くから囁くように響く。



セルナ:「――この地に踏み入れば、あなた方の“時間”は試されます。水はすべてを映す。真実も、嘘も、あなた自身も。」


マーカス:「ふん……映るのはこの顔だけだといいんだがな。」


 淡い笑いを残しながら、彼は前を歩く。

 だが、足音が水に沈むたび、胸の奥に重い残響が返ってきた。

 それは、忘れたはずの声――銃声と悲鳴の記憶。



【幻影の回廊】


 青白い光に包まれた迷宮の中、マーカスの周囲に淡い泡が立ち上がる。

 それは一瞬にして、彼の過去を映し出した。


――燃え落ちる街。

――血に濡れた銃剣。

――命令を下す軍上層。

――自分の手で、守るはずの者を撃った夜。


マーカス:「……チッ。今さら見せんなよ。分かってるさ、俺がやったことぐらい。」


 幻の中から、ひとりの青年が歩み出る。

 それは若き日の自分自身――まだ“撃鉄の誓い”を知らなかった頃。


青年:「どうして引き金を引いた? お前は守るために剣を取ったんじゃなかったのか?」

マーカス:「……守るために撃った。結果がこれでもな。」

青年:「なら、誰がその“結果”を許す? お前自身か? それとも――彼女か?」


 マーカスの眉がぴくりと動く。

 “彼女”――その響きに、ほんの一瞬だけ水面が揺らめいた。

 青い光が心臓の奥に届く。

 ユーコの微笑、その声、そして今も背を押してくれる眼差し。


マーカス:「……違うな。今の俺は、もう一人じゃねぇ。俺の“時間”は止まっちゃいねぇ。誰かと繋がって動いてる。」


 青年の姿がゆっくりと崩れ、波紋のように消えていく。

 静けさだけが残り、マーカスは深く息をついた。



【覚醒の前兆】


 水環の底で、導師セルナが低く呟く。


セルナ:「……通過確認。魂の水律、安定。これで“封印調律”に移行できます。」


 彼女の背後で、巨大な柱が現れる。

 螺旋状の紋様が流れ、青い文字が浮かび上がる。

 その中心――まるで時間を護る番人のような影が姿を取った。


 それが封印の守護者、〈クロノ・ガーディアン〉。

 時を束ね、水を律する存在。

 光でも闇でもない、“流れそのもの”の意志。


ガーディアン:「──汝ら、時間の徒よ。止まる覚悟はあるか。進む覚悟はあるか。」


マーカス:「……どっちもごめんだ。俺は進みながら撃ち抜くタイプでね。」


ユーコ:「マーカス……!」


 マーカスは振り返らず、銃剣を構えた。

 水面が爆ぜ、光の波が空へ伸びる。

 銃剣の刻印が淡く輝き、**“ソウルイータ”**が起動する。


マーカス:「――これが俺の審律だ。魂で引き金を引く!」


 轟音。

 水環が震え、青光の奔流が彼らを包み込む。

 封印の決戦が、静かに始まった。

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