【第三章 :メルツ王国編】

第12話 『氷原に響く封印の律動』


◆シーン1 氷霜柱前の緊張


 フロストヴェール氷原の奥、巨大な氷霜柱フロスト・コラムが立ちはだかる。

 その表面は透明な氷の層に覆われ、光を反射して微かに青白く揺らめいていた。


 マーカスは一歩前に踏み出し、左肩の調律印に意識を集中させる。


――ドクン、ドクン。


 胸の奥で、封印の“声”が震える。

 ただの音ではない。大地と風、魔力と時の重なりを通じて伝わる、呼びかけのような振動だった。


 ユーコがそっと杖を握り直す。

 胸元の星紋が淡く脈打ち、風が彼女の周囲で揺れる。


「マーカスさん……封印の力、すごく……強いです」


「わかってる。だが……俺たちで止められる」


 二人の視線は互いに重なり、決意が静かに確かめられた。



◆シーン2 封印柱への接触・干渉


 マーカスは氷霜柱に歩み寄り、右手を軽くかざす。

 調律印が柔らかく光り、彼の魔力と柱の封印の振動が呼応し始める。


 ユーコも杖を高く掲げ、胸元の星紋を輝かせた。

 魔法陣が氷原に光の波を描き、薄氷のような光が柱を包む。


聖光律ルミナス・コンチェルト、展開!」


 光の奔流が柱に触れると、氷霜が舞い上がり、青白い光が柱全体を覆った。

 柱の内部から封印の“欠片”が揺れ、微かに形を変える。


 「揺らぎ……止められるか、これ……」


 マーカスの声に、ユーコは頷いた。


「はい。マーカスさんの刻印と、私の魔力を合わせれば……必ず!」



◆シーン3 封印の影との交錯


 その瞬間、氷霜柱の周囲から欠片の影が飛び出した。

 狼の形をした氷片の魔獣が、突如として二人に襲いかかる。


「きゃっ!」


 ユーコが杖を振り、白魔法プロテアで防壁を展開。

 光の膜が欠片の衝撃を弾き返し、散乱する氷片は雪原に落ちる。


 マーカスは瞬時に魔吸剣ソウルイータを抜き、敵を押し返す。

 光と氷霜の衝撃が、雪面に小さな波紋を広げた。


「まだ来ますっ!」


 ユーコは杖の星紋をさらに輝かせ、惑星術・光星術ルーミナル・スフィアを追加する。

 光の奔流が氷片の魔力を浄化し、魔獣の力を削ぐ。


 互いに呼応するように、マーカスの斬撃とユーコの魔法が連鎖する。

 光と音、振動が交錯し、封印の律動が二人を包む。



◆シーン4 封印解除(調律)のクライマックス


 戦闘が終わり、最後の魔獣も粉砕されると、マーカスは深く息を吐いた。

 左肩の調律印が静かに脈打つ。


 彼は再び右手を氷霜柱にかざした。

 そして柱の表面に優しく触れる。

 冷たく硬い氷に、刻印の力を通わせるように意識を集中させた。


――ドクン、ドクン……


 微かな振動が右手を通じて全身に広がる。

 ユーコも杖を高く掲げ、胸元の星紋が光を増す。

 封印柱との再接触が、二人の魔力を共鳴へと導く。


 その瞬間、光の奔流が柱を包み込み、封印の律動が完全に安定した。


 氷霜柱が淡く光り、封印の“欠片”や影は柔らかく消滅していった。


 同時に、マーカスの左肩にあった鈍い痛みが、すっと消え去る。

 長らく響いていた違和感がなくなり、肩の力が自然に抜けた。


 風が静かに吹き抜け、雪原に清らかな光の残滓を残す。

 封印柱からは、微かに“声”が響き、呼びかけは穏やかな旋律へと変化した。


「……やったのか?」


 マーカスは肩を軽く叩き、深く息を吐く。


「はい。封印の律動が、安定しました……」


 ユーコの声には、安堵と微かな興奮が混ざる。

 胸元の星紋が余韻のように脈打ち、光が雪原に溶けていった。



◆シーン5 次章への布石


 二人は氷原を見渡し、遠くの山脈を背景に影を伸ばす。

 氷霜柱フロスト・コラムは、確かに二人を待っていたことを伝えていた。


「これで……少し先に進めますね」


「……ああ、そうだな。次の封印も、きっと待ってるだろうからな」


 風が二人の間を通り抜け、迷いを吹き払うように優しく揺れた。

 氷原は静かに、だが確かに呼吸を取り戻していた。

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