第3話 おっさんには勿体ない美容液
「じゃあ、次のステップ、乳液。化粧水をたっぷりとしたら乳液ね。大事な成分を閉じ込めるの。これも化粧水と一緒。手に馴染ませてゆっくりと肌に押し込めるようにして」
ふむふむと手を動かす。ベタベタと顔全体にまんべんなくつける。
「あ――、拭かない! 無くなるまでするの!」
手を拭こうとして娘に叱られた。無くなるまで? この手のベタベタが無くなるまでするのか?これ無くなるのか?
言われるままにまた手を動かした。すると徐々に手にあった乳液が無くなってきた。これって肌に浸透しているってことなのか?
確かに、最近肌がモチッとしてきたような、オジサンの肌がモチッとって……。
想像してちょっと自分でも気持ち悪かった。
ある時、スマフォで検索してみたら男の美容関係なるものがたくさん出て来た。出てきたが恐ろしくて途中で見るのを止めた。何となく見てはいけない気がした。やっぱり俺は古い人間なのかもしれない。
化粧水やら乳液やらと娘のものを借りて使っていたから、娘のものが少なくなってきた。俺は娘の指示通りに同じものをドラッグストアに購入しに行った。
陳列棚には様々なメーカーから様々な商品が発売されていた。男性専用とうたっているものもあった。ちゃんと男性用コーナーがあった。こんなにも世に出されているとは思ってもみなかった。
俺は世間に置いていかれているのかと感じた。まあ、オジサンとはこんなものだろうが……。
「今や男の人の美容も常識。私の同級生も基礎化粧しているよ? 男の子で脱毛している子もいるし。パパの時代が遅いのよ」
俺、昭和最後の世代。記憶は平成。まあ、中途半端な時代だな~と苦笑した。
そして最後の仕上げと娘が小瓶を取り出した。
「パパに美容液か……。もったいない気もするけど、パパが若く見えるなら仕方ないか……」
娘がちょっとため息をついた。何のため息だ? ここまで色々とやっといてそれはないだろう?
だが、美容液と聞いて俺は小瓶を見つめた。40代のオッサンに美容液? そりゃ、勿体ないと言葉が出るか……。
取り敢えず、娘に言われるまま、小瓶から少量クリームを取り、肌に乗せる。指で静かにクリームを滑らすとスーと馴染んでいくのが分かる。
おおっ‼ ちょっと他とは違うこの感覚。美容液という名前だけあるな、と変な所に感心した。
娘と美容について話をするうちにスキンケア以外のことにも目が向くようになった。娘が話す食事のことだったり、日常で出来るちょっとした運動のことだったり、娘と話すことが多くなった。俺にとってはちょっとしたラッキーな副産物だった。
40代のおっさん、高校生の娘と会話が出来てマジ嬉しい!
シェア メイク! 鈴懸 @yoshinagi
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。シェア メイク!の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます