結:確信
また別の日、ヤギは今日も荷車を運……んでいたが既に追いかけられていた。
全速力で西へ向かって走り続ける白い影。
白い影を追いかける黒い影。
二頭が走ったそばから細長い雲ができていく。
ここ最近毎日だ。見つかっては森に入って隠れたり、身代わり(雲)を置いてそそくさ逃げたり……。
今日に限ってはとくに酷かった。何をしても効果がない。
オオカミに見つかってからというもの、わけが分からないまま世界の端っこまでひたすらに走り続けた。間も無く、西の果ては目の前だ。
オオカミは今日こそヤギを逃すまいと鼻息を荒くした。そして大きな一手に出る。
脚力にありったけのエネルギーを込め飛躍するとヤギの荷車に飛び乗り幌にしがみつく。
————メェエエッ!!
荷車越しに衝撃と重量を感じたヤギは、後ろを見るまでもなく蛇行して彼を振り落とそうとした。やがて北に荷車を傾けた時、オオカミは見えない壁に当たって落下する。
彼女は近くの厚い雲へと荷車と共に軽やかに崖上りの如く駆け上がった。のぼった雲の上をぐるりと転回して黒いオオカミの姿を見下ろす。
彼もしばらく彼女を見上げていたが、やがて自身も同じように雲を駆け上った。ヤギは動かず、彼の黄金色の瞳が彼女を捕まえる。
同じ色の瞳を持つ二頭の間に、音のない静かな時間が流れた。その静けさの中に、両者は確信に似たものを感じ始める。
互いは互いの一部を持つ繋がりある存在であると。
いくばくかの時間が経過した後、ヤギは雲から下りた。一度だけオオカミの方を見上げたが、すぐに西の果てへと駆け出していった。
西の果ては崖になっており、ヤギはその断崖絶壁に恐れる様子もなく飛び込み姿を消した。
————クウン……
ヤギのいなくなった空にオオカミだけが取り残されると、やがて彼も雲を下りて南の果てへと駆け出していった。
オオカミの狩りは失敗に終わり————彼らには目に見えない絆が残った。
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