……好きな人がいるんです

数日後。

放課後のチャイムが鳴ると、いつものように教室は一気にざわつき始めた。

俺はカバンを肩にかけながら、何となく七瀬の席を見る。

目が合った。

七瀬紗月は、ほんの一瞬だけ迷うような表情をしてから、こちらに近づいてきた。


「青木くん」

「行く?」

「……はい」


はい、こちらもいつも通りですね。


―――――――――――――――――――――――


いつもの場所、もとい第二校舎の空き教室。

人の気配もほとんどしない。

俺と七瀬さんは定位置となりつつある椅子に座り、しばらく沈黙の時間が流れた。


七瀬さんは決意を固めたようでこちらを向き話し始めた。


「今日はきちんと相談します」

「うん」


ようやくか、と内心思ったりもしたが、急かさずに

七瀬さんの話を聞く。


彼女は一度、二度深呼吸をした。


「私……好きな人がいるんです」

「そっか」


予想はしていたが、いざ聞くと一瞬呼吸が止まりそうになった。


が、あくまで表情にはださない。


「……驚かないんですね?」


「女子高生なんだから恋の一つや二つくらいするでしょ」


(まあ、なんでその相談を俺にしてきたのかは謎だけど)


そう思いながら、

俺は七瀬さんの次の言葉を待った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る