第2話・男だとか女だとか、そんなの意味あるかしら?極楽車ぁ

 ロバのバリエンテが、フェリシアとショウ王女を守るように兵士に向かって、前脚で地面を掻く。

 ジワジワと迫ってきていた、兵士たちの足が止まる。


 フェリシアとショウ王女から少し離れた大木の根元で、背もたれていた大男が立ち上がるのが見えた。

 いかつい顔つきで、屈強な体躯の戦士が、腰の剣帯に提げている幅広のクレイモア両手剣を見た兵士の一人が呟く声が聞こえた。

「聖なる剣と魔の剣の剣身ブレードを、背中合わせに融合鍛錬させた聖魔剣……まさか、あの戦士は」


 顔に刀傷が残る筋肉質の戦士が、フェリシアとショウの前まで進み出ると兵士たちに向かって言った。

「いゃあねぇ……気持ちよく眠っていたのに、木が倒れる音で起こされちゃったわ……うふッ」

 見た目とのギャップが大きい、オネェ言葉の戦士だった。 

 少し拍子抜けする兵士たち、数名が小馬鹿にした笑みを浮かべながらオネェ言葉の戦士に迫る。

「邪魔するな、何も言わずにこの場から去れ! オ◯マ」

 戦士が持っている聖魔剣を知っている兵士だけが、後退りをする。

 

 オネェ戦士が言った。

「見たところ、あなたたちが悪者みたいね……その認識でいいかしらぁ……うふッ、オ◯マっ言葉撤回してくれたら、見逃してあ・げ・る」

「誰が撤回するか! このオ◯マ!」

「しかたがないわねぇ……あたし、怒っちゃうわよ……てめぇらの血の色は何色だ!」

 腰の剣を抜かずに、大男の戦士は隊長らしき兵士に向かって、太い腕でラリアート攻撃をする。


「ぐげぇぇぇ」

 喉元を押さえた兵士隊長に向かって後ろを取った、大男戦士が地面をゴロゴロ回転する、ローリング・クラッチ・ホールド回転エビ固めに似た大技をかけた。

「えいっ、極楽車ぁ……こんだけぇ」

「ぎょえええぇぇぇ!」

 技をかけられた兵士隊長は、何度も頭部を地面に激突させられて、天使の翼を生やした自分が空に上がっていく幻を見た。


 兵士隊長が今まで、一度も見たことが無い技をかけられて、白目を剥いて気絶したのを見た部下の兵士たちは、悲鳴を発して逃げ出した。


 謎のオネェ言葉戦士が、フェリシアとショウにウィンクをして見せた。

「うふッ……倒しちゃった……こんだけぇ、ところでさっき、美味しそうなモノを食べていたわね……あたしにも食べさせてくれない」


  ◇♡◇♡◇♡


 街道の木陰で、フェリシアが焼いたパンを、謎の大男は貪るように食べる。

「美味しいわ、焼きたてのパンって言うのね……美味しいわぁ、これでお肉を挟んだら、もっと美味しくなるわぁ」

 パンを食べ終わった大男が言った。

「さてと、お腹も一杯になったから質問するけれど……あなたたち、誰? なんで追われていたの?」


 フェリシアがパン焼き窯の中に残っている炭火を、火かき棒で搔き回しながら言った。

「その前に、あなたのコトを教えてください……あなた、誰なんですか?」

「これは、失礼……あたしの名前は『ドララ・ララ』見ての通りの魔法戦士よ」

「ド・ララララ?」

「ドララが名字でララが名前……あなたたち、もしかして転生者? なんとなく、そんな雰囲気がするけれど……もしも、お気楽でイベント感覚なトラ転とか電転だったら」


 ドララ・ララがクレイモアの柄に手をかけて構える。

「あたし、そういうお気楽なクサレ転生者は大嫌いだから、返答次第では居合いの瞬斬で、二人とも首が地面に落ちるわよ」

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