第12話 爆炎の美女、空から降る ~修羅場は戦場より恐ろしい~
スパイを捕らえ、雑草スープで一息ついた夜。
俺とセシリア姫は、城壁の上で夜空を見上げていた。
「……星が綺麗ですね、カズヤ様」
「そうですね。……あの星の下には、俺たちの首を狙う五千の敵がいるわけですが」
ムードもへったくれもない返答をしてしまった。
だが、姫は少し頬を染めて、俺の袖をギュッと掴んでいる。
「カズヤ様がいれば、怖くありません。不思議です。あんな絶望的な状況だったのに、今は……」
姫が潤んだ瞳で俺を見つめる。
おいおい、待ってくれ。吊り橋効果ってやつか?
ここで変なフラグを立てると、俺の死亡率が上がる気がするんだが。
「カズヤ様、私……」
姫が何かを言いかけた、その時だった。
ヒュゴオオオオオッ!!
夜空から、ジェット機のような爆音が響いた。
星々の間から、火を噴く「何か」が猛スピードで砦に向かって落下してくる。
「なっ、敵襲か!?」
「隕石!?」
兵士たちがパニックになる中、その物体は中庭のど真ん中にド派手に墜落した。
ズドォォォン!!
土煙が晴れると、そこには黒焦げになった巨大な「酒樽」のようなものがあり、蓋がバカっと開いた。
「ゲホッ、ゲホッ! ……着陸成功ね! 計算通りだわ!」
中から這い出してきたのは、煤だらけの赤髪の美女。
ボロボロの白衣を着崩し、豊満な谷間を強調したその姿。
彼女はキョロキョロと辺りを見回し、城壁の上にいる俺と目が合った。
「あ! 見つけた! あなたが噂の『異世界の天才軍師』、カズヤね!?」
「は? 誰だあんた!?」
初対面の俺に向かって、彼女は猛ダッシュで駆け寄り、なんと階段を飛び越えて俺の首に飛びついた。
「実物は手配書よりずっといい男じゃない! 気に入ったわ、今日からあなたが私の『共同研究者(パートナー)』よ!」
「ぐえっ、苦しい! あと胸が当たってる! 誰か助けて!」
謎の美女はお構いなしに俺の頬にスリスリと顔を押し付ける。
周囲の兵士たちが「ぐ、軍師様、いきなりあんな美人と……破廉恥な!」とざわめく。
だが、俺の背筋に冷たいものが走った。
ゆっくりと視線を横に向ける。
そこには、能面のような無表情で立ち尽くすセシリア姫がいた。
「……カズヤ様?」
声が低い。絶対零度だ。
「あの方……どなたですか? ずいぶんと、その、情熱的に初対面の挨拶をされていますが」
「い、いや、俺も知らないんだ! いきなり空から降ってきて……」
「初対面なんて関係ないわ! 魂が共鳴したのよ!」
赤髪の女が空気を読まずに爆弾を投下する。
彼女は俺の腕に豊満な胸を押し付け、勝ち誇ったように姫を見た。
「私はヒルデガルド。帝国の天才技師よ! 彼の頭脳を使いこなせるのは、同じ天才である私しかいないわ。ね、カズヤ?」
ピキッ。
姫のこめかみに青筋が浮かんだのが見えた。
「……不潔です」
「え?」
「戦場で! 皆が見ている前で! 初対面の方とそんな……! カズヤ様のバカァッ!!」
セシリア姫は真っ赤な顔で叫ぶと、涙目で走り去ってしまった。
「あ、待って姫様! 誤解だ!」
追いかけようとする俺を、ヒルデガルドがガッチリとホールドして離さない。
「なんで追いかけるのよ。それより早く、私が持ってきた新兵器を見てよ! すごいわよ、今度は敵を骨まで焼き尽くせるわ!」
俺は天を仰いだ。
外には五千の敵。内には初対面の爆弾娘と、激おこのお姫様。
もしかして、一番の敵は俺の女運なんじゃないだろうか。
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