第3章:大国侵攻・防衛戦編

第10話 【悲報】平和なポテチ生活、一日で終了。大陸最強の帝国軍が攻めてきました。

商業ギルドとの経済戦争に勝利し、王都に平穏が戻ったある日の午後。  俺は執務室のソファで、至福の時を過ごしていた。


「あーん」 「はい、あーん」


 セシリア姫が、揚げたてのポテトチップス(のり塩味)を俺の口に運んでくれる。  サクッとした食感。磯の香りと岩塩の旨味。そして姫の笑顔。  完璧だ。これぞ俺が求めていたスローライフだ。


「カズヤ様、塩加減はいかがですか?」 「最高です。……もう一枚」 「ふふっ、もう。カズヤ様は食いしん坊ですね」


 このまま平和ボケして一生を終えたい。  だが、異世界の神様は、俺に安息を与える気などサラサラなかったらしい。


 バンッ!!


 執務室の扉が、蝶番が壊れるほどの勢いで開かれた。  飛び込んできたのは、泥だらけの伝令兵だった。


「ほ、報告します!! こ、国境の『鉄壁の砦』が……帝国軍に包囲されました!」


 空気が凍りついた。  俺は口にくわえたポテチを落とした。


「……は? 包囲? 宣戦布告は?」 「ありません! 奇襲です! 敵の先遣隊およそ五千が、砦を取り囲んでいます!」


 五千。砦の守備兵は千人もいないはずだ。  しかも、相手は大陸最強を謳うガレス帝国。まともにやり合えば半日も持たない。


「姫様、ピクニックは終わりです」


 俺は立ち上がり、軍師のコート(ただの防寒着だが)を羽織った。  震える膝を机の陰で隠しながら、虚勢を張る。


「ガルド将軍を呼んでくれ。……少し、遊びに行ってくる」


       ◇


 王都から急行し、国境の砦に到着したのは翌日の深夜だった。  砦は断崖絶壁の上に建つ要塞だが、その空気は最悪だった。  城壁の上から見下ろすと、闇の中に無数の篝火(かがりび)が見える。帝国軍の包囲陣だ。


 だが、本当の地獄は「外」ではなく「中」にあった。


「おお、軍師殿! お待ちしておりました!」


 出迎えたのは、砦の司令官である男爵だった。  だが、彼の顔は煤(すす)で真っ黒に汚れ、絶望に染まっている。  砦の中庭からは、まだ焦げ臭い煙が上がっていた。


「……なんだ、あの煙は? 敵の火矢か?」


「い、いえ……それが……」


 男爵が泣きそうな声で報告した内容は、耳を疑うものだった。


「兵糧庫が……全焼しました」


「……はい?」


「昨夜、何者かが倉庫に火を放ったのです。消火が間に合わず、備蓄していた麦も干し肉も、すべて灰に……。残っている食料は、わずか三日分です」


 俺は頭を抱えた。  包囲戦において、食料がないというのは「死」と同義だ。  しかも、外からの攻撃ではない。


「内部犯か」


 俺は鋭い視線で周囲を見渡した。  兵士たちが不安げにこちらを見ている。  この中に、帝国に通じた裏切り者がいる。そいつが食料を燃やし、こちらの自滅を狙ったのだ。


「食い物がないんじゃ、戦う前に餓死だ……」 「もう降伏するしかないんじゃ……」


 兵士たちの士気は崩壊寸前だ。  このままでは、敵が攻めてくる前に内部から瓦解する。  どうする? 犯人を探すか? いや、そんな時間はない。まずは腹を減らした彼らを何とかしなければ。


 俺は大きく息を吸い込み、わざとらしい高笑いを響かせた。


「ハッハッハ! 何をシケた顔をしている!」


 全員の視線が集まる。  俺は中庭の地面を指差した。


「食料がない? 馬鹿を言うな。足元を見ろ。ここはいっぱいのご馳走で溢れているじゃないか」


「は? ご馳走……?」


 兵士たちが足元を見る。  そこにあるのは、踏みつけられた雑草だけだ。  俺はニヤリと笑った。


「知らないのか? 一流の軍隊というのは、現地調達の達人なんだよ。……今から俺が、お前らに『極上のスープ』を振る舞ってやる」


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