第9話 【倍返し】ギルド「塩を独占して国を干してやる」→俺「岩塩の半額セール、始めます」

​ 数日後。王都の中央広場は、一触即発の熱気に包まれていた。

 原因は、商業ギルドによる「塩の価格吊り上げ」だ。

 

「また値上げかよ! これじゃパンも焼けない!」

「子供にまともな飯を食わせられないなんて……」

​ 市民の不満が爆発寸前の中、俺はギルド出張所の真向かいに、ド派手な特設テントをぶち立てた。

 掲げた看板の文字はこれだ。

​『緊急企画! 国産最高級ピンクソルト。今ならギルド価格の【半額】!』

​「な、なんだと? 半額だと!?」

「国産の塩? この国にそんなものあるわけが――」

​ 疑心暗鬼の群衆の前に、俺はエプロン姿で立った。

 隣には、売り子に扮したセシリア姫。彼女が微笑むだけで、男たちの視線が吸い寄せられる。最強の販促ツールだ。

​「さあ、いらっしゃい! ギルドの塩よりまろやかで、どんな料理にも合う『アルカディア・ソルト』だよ! 味見はタダだ!」

​ 半信半疑の主婦が、一粒舐める。その瞬間、彼女の顔が輝いた。

​「……あら!? 美味しい! いつもの塩みたいに苦くないし、甘みすら感じるわ!」

「しかも半額かよ! 十袋くれ!」

「俺にも!」「私にも!」

​ 雪崩のような客。飛ぶように売れる塩。

 そこへ、顔を真っ赤にした男が、用心棒を引き連れて怒鳴り込んできた。

 商業ギルド長、ゴルドンだ。

​「き、貴様らぁぁ!! ここで何をしている!」

​ 俺の胸ぐらを掴もうとする彼の手を、ガルド将軍がアイアンクローで静止させた。

 俺は売上の銀貨をジャラジャラと鳴らしながら、最高に嫌な笑みを浮かべる。

​「何って、商売ですが? 自由競争でしょう?」

​「ふざけるな! 塩の輸入はギルドの特権だ! 密輸なら即刻死刑だぞ!」

​「密輸? 人聞きが悪いな。これは我が国の『岩塩鉱山』で採れた純国産ですよ。姫様が直々に採掘権を許可された、正真正銘の王室認可品です」

​「岩塩だと……? あの廃鉱山が……馬鹿なっ!」

​「あんたは『輸入』にこだわって、足元の『資源』に気づかなかった。ただそれだけのことだ。――あ、そうだ。もうポテチ用の塩も足りてるんで、あんたの在庫は全部腐らせておいてください」

​ 絶叫して膝をつくゴルドン。

 経済を武器に国を脅かした男の末路は、市民からの「ざまぁ!」という冷ややかな嘲笑だった。


こうして、第一次経済戦争は、俺たち「内政チート軍団」の完全勝利で幕を閉じた。  そして、この勝利が国内の経済を安定させ、来るべき「大国との戦争」への足場を固めることになったのである。


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