第4話

ユウタが劉さんに出会ってから一ヶ月が過ぎた。

二人はいつもの通り、紀伊國屋書店からコメダ珈琲に移動して、話し込んでいた。

「月収10万円を達成するには、『価格設定』と『付加価値』の見直しが必要です」

劉さんは、2ヶ月目の初日に言った。

「今のあなたの鑑定は500円。しかし、レビューは全て5つ星。これは『信頼』という資産を築いた証拠です」

「でも、値上げしたらお客さん減りませんか?」

「減りません。むしろ、安すぎる価格は『質の低さ』を連想させます。あなたの鑑定は、既に1500円の価値がある」

「そうなんですか!嬉しいです!」

劉さんは、新しい価格表を示した。


【新価格設定】

・簡易鑑定:1500円(500円から値上げ)

・詳細鑑定:3000円(新設)

・電話鑑定:30分5000円(新設)


「詳細鑑定では、カードの解説だけでなく、具体的な行動アドバイスを加えなさい。電話鑑定では、リアルタイムで対話しながら占う」

「電話鑑定……緊張します。ちゃんと話せるかどうか」

「大丈夫。あなたには既に30件もの実績がある。自信を持ちなさい」

「そうですけど…僕はまだ知識もないし…」

「いいですか、ユウタさん。依頼者は占いの話が聞きたいんじゃないんです。自分の悩みを聴いてもらって、楽になったり、解決方法を知ったり、なんらかの決断をしたいんです。『占いの話』をし過ぎる占い師が多いのですが、それは間違いです。依頼者の話をちゃんと聴くように心がけてください」

「わかりました!」


ユウタは価格を変更し、サービス内容も充実させた。

すると驚くことに、依頼数は減らなかった。

むしろ増えた。


「なんで…?」

「人は、高いものに価値を感じる生き物です。そして、あなたの丁寧な鑑定は、その価格に見合っている」

劉さんは穏やかに微笑んだ。


2ヶ月目の半ば、劉さんは新しい課題を出した。

「タロットでの占いにもだいぶ慣れてきたでしょう」

「はい! 自信を持って話せるようになってきました」

「では次の段階に進みましょう。命術……まずは西洋占星術を学びなさい。占いの幅を広げるのです」

「西洋占星術…難しそうですね。っていうか劉さん、めっちゃ中国系の人なのに西洋系の占いばかりすすめてきますね」

劉さんはユウタの言葉を無視して続けた。

「まずは基礎の基礎だけでいい。太陽星座、月星座、アセンダント。この3つを理解しましょう」


劉さんは、自作のレジュメを元に、ホロスコープの読み方を教えてくれた。

「人は、自分の内面を知りたがっています。『あなたは牡羊座だから情熱的』という表面的な占いではなく、『あなたの月星座は蟹座なので、実は繊細で家族を大切にする』というように、一歩踏み込んで読み解きをするようにしなさい」

ユウタは夜遅くまで勉強した。

劉さんから貰ったレジュメを読み、実際のホロスコープを何度も作成した。 そして、ココナラに新しいサービスを追加した。


「西洋占星術による深層心理分析:3,000円」


これが大ヒットした。 特に30代の女性からの依頼が殺到した。

「自分でも気づいていなかった部分を指摘してもらえて、涙が出ました」 「今まで受けた占いで一番納得できました」

レビューには、そんな言葉が並んだ。


2ヶ月目の終わり。

ユウタのSNSフォロワー数も増やしていた。

Twitterは1200人、Instagramは800人、TikTokは500人。


「先生、月収12万円達成しました!」

ユウタは興奮気味に報告した。


【内訳】

・ココナラ簡易鑑定:30件×1500円=4万5千円

・ココナラ詳細鑑定:15件×3000円=4万5千円

・電話鑑定:4件×5000円=2万円

・SNS経由の鑑定:10件×1000円=1万円


「素晴らしい!2ヶ月でここまで来るとは」

劉さんは満足そうに頷き、コメダブレンドたっぷりサイズを飲み干した。

「しかし、まだまだ序の口です。次は月収50万円を目指しましょう」

「50万…!?」

「可能です。しかし、そのためには───」


『システム化』が必要になります」

(続く)

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