【ハルカ】6

 東京に向かう日が来た。

 これからは少しずつ自分でできることを増やして、東京で待っている父にも迷惑を掛けないようにしないといけない。何より、ずっと私の側にいてくれたユウジがいないのだから。

 見送りに来たユウジは、当たり前のように荷物を運ぼうとするけれど、私はそれとなく、彼を遮る。


 できることなら、また彼と一緒に楽しい日々を、なんて思うけれど、私はこの右手で掴むのは銀色のマイクなんだと、心に決めたのだから。

 背中に、風邪ひかないようにねと彼の言葉が届いて、私の左肩が少し暖かくなった。


 走り出したタクシーの中で、イヤホンを耳に挿す。ユウジの家で一緒に聴いて、初めて彼の前で歌った曲。懐かしくて、涙が出そうになる。


 バックミラーの中、紅葉の下に彼が見えた。

 初恋の人はいつまでもいつまでも、私を見つめて立っていた。




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more than wordsをききながら マキノ @Makino_novel

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