【ハルカ】2

 スキーに行った帰り道の交通事故で、私は母親と、左腕をなくした。


 久しぶりに行った学校では、クラスのみんなは優しくて、誰も事故のことは聞いてこないし、給食の時間には机までご飯を運んでくれる。今思えば、とてもいい子ばかりだった。だから学校生活は不便なことはたくさんあるけれど、慣れていくのも早かった。


 けれども、私もやっぱり子供で、ある終業式のとき、学校から持って帰る荷物が多すぎることに気が付いて机で呆然としていた。片方の腕じゃ、運びきれない。他の人より荷物が多いわけじゃないのに、今の自分には抱えきれない荷物を見て、涙が込み上げてきた。


 かすむ視界に、誰かの手が伸びてきた。ユウジだった。

「僕が持つよ。一緒に帰ろう」

 ユウジは私の荷物を自分の肩にかけた。

「ありがとう。重くない?」

「これくらい大丈夫だよ」


 外はいつの間にか雨が降っていた。傘は持ってきているけど、片腕しかない私は荷物と傘の両方を持てない。悪戦苦闘する私の右手に、ユウジの手が触れた。

「僕がこっちも持つから、傘差してもらってもいい?」

 私はユウジに言われた通りに傘を広げて右手で持った。そうして私たちは二人で一つの傘に入って、ゆっくりと歩き始めた。


 マンションの玄関に着いたとき、ユウジは私の傘を畳んでくるくると上手に巻いた。

 器用な彼の指先は少しささくれがあって、白くて、優しさに満ちていた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る