【ハルカ】1

 カフェに入ると、奥の席にスーツの男性が座っていた。

 芸能事務所の人だから、もっと派手な服装を想像していたけれど、真面目なサラリーマン風で、本当にこの人なのかと少し不安になった。


「Haruさんですね。高木です」

 私の姿を見つけた高木さんは立ち上がって私に名刺を差し出した。「株式会社ミュージカ」と書かれている。自分に大手芸能事務所から連絡があったことにはとても驚いたし、こうやって面と向かって会ってみても、これが現実なのか半信半疑の気持ちだ。


「あの……、驚かないんですね」

「え? ああ。実は一度、サークルのライブを拝見しておりまして」

 高木さんの視線が一瞬私の左肩に移った。


 初対面の人はみんな私を見て少し驚く。

 片方の腕しかない、私を見て。


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