【ユウジ】7
三ヶ月後、ハルカはこの街を離れ、東京に引っ越すことになった。
彼女のマンションまで見送りに行ったとき、ハルカはタクシーにボストンバッグを入れようと苦戦していた。僕が手伝おうと手を伸ばすと、彼女は「大丈夫。自分でできるよ」と首を横に振った。
「困ったことあったら、何でも言ってね」
「ありがと」
風が吹いた。東京はこの街よりずっと南だから、少しは温かいのだろうか。
「風邪、ひかないようにね」
彼女の背中に投げた言葉は秋風に連れ去られたようで、ハルカは答えなかった。そのままタクシーに乗り込み、彼女はイチョウ並木の向こう側へと消えていった。
東京に行ったハルカからはほとんど連絡が来ることはなかった。お正月とか、僕の誕生日にだけ短いメッセージが届いたけど、それだけだった。
いつも一番上にあったはずのハルカとのチャット欄が、だんだん画面の下に沈んでいく。何かしてほしいとか、何か送ってほしいとか、そんな連絡なんてこない。
ハルカは、僕がいなくても、東京という街で新しい生活を始めているんだ。
そうやって時間をかけて、僕は、ながいながい初恋が、終わりを迎えたことを受け入れていった。
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