Chapter #0001 Homme Fatale / Segment 2 舞踏会のはじまり
馬車が切り通しを抜けるとき、脇には一騎も護衛がいない。そもそも狭い道、騎兵だけでも二列縦隊が限度だ。しかも、騎兵は十騎しかいない。
そこへ崖上の伏兵ポイントから、馬に向けて
「敵襲ーッ!」
護衛が叫ぶ。
馬が転げて、馬車が横に倒れ、派手な音を立てた。
ストロベリーさんは、膝の関節がロックされないように意識して軽く曲げつつ、馬車が横転しても耐えて突っ張り棒のまま、無傷だった。
ピピンさんは、ストロベリーさんの胸の中で、目を回しただけで済んだ。
「ピピンさん、喋れますか?」
ピピンは一言だ。
「はわわ……」
ストロベリーさんは安堵した。
「それだけ喋れれば舌は無事ですね……ピピンさんは私が守ります。ここでご睡眠あそばせ」
ストロベリーさんは、地面と接地している右ドアのそばに、ピピンさんを優しく置いた。
そして、自分の緑色のティアラを探した。凄まじい動体視力でティアラが飛んだ方向を追い、凄まじい聴覚でティアラと馬車が立てる音を追っていたので、あっさり見つかった。
ストロベリーさんがティアラを拾い、右半分を力を込めて1mm潰し、左側を力を込めて1mm広げると、ティアラは二つに割れた。
ストロベリーさんは、それを右手と左手に装着した。ティアラは鉄製で、こういう時のために、そういう作りになっている隠し武器だ。BGMもエフェクトも無い、穴に指を通すだけの地味な武装シーンだ。
ティアラの左右の結合部は鉄の厚は1mmもないが、鉄甲として使用する部分は15mm程の厚がある。ちなみにプレートメイルの厚みは2mmもあれば贅沢アンド重い(銃撃を考慮したものは2mm越えの部分もあるが、全身が2mm厚ということはあまりない)。
ストロベリーさんは、手足を突っ張らせて三点支持しつつ、突っ張らせる手足を巧みに変えて、左ドアのほうへ
左ドアのノブを右手で回して力を入れてみれば、ドアは少し歪んで素直に開かない。
ストロベリーさんは、ドアノブは回したまま、一瞬全身の筋肉をゆるめた後、強力に三点支持した次の瞬間に右手で発勁を送り込んだ。
「はッ!」
右手が蒼白く輝いて、三点支持を支える木が耐えきれずに手足がめり込む。
ドアは
(私は魔法は使えません。ですが、『気』を操るのはドラゴンフルーツ先生以上と太鼓判を押されました)
ストロベリーさんが馬車の上で俯瞰すると、馬車の騎手は馬の下敷きになって死亡していた。十の騎兵は恐らく魔法攻撃にやられたのだろう、みな馬と共に焼け焦げた肉の香りを漂わせていた。
「ストロベリー王女、お命頂戴いたします」
切り通しの上から、男の声があった。
(馬車が燃えると、ピピンさんが危険ですね)
ストロベリーさんは、馬車から地面に降り立った。
そして、スカートの両端をつまみ上げ、膝を折り、声の方向に頭を下げて優しい声で言った。
「Shall We Dance?」
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