第4話 フジキちゃーんが「そうなった理由」(誰も幸せにならない)
その話は、
誰も聞いていないのに始まった。
「……昔の話、する?」
夜のファミレス。
ドリンクバー前。
なぜか全員集合。
「しなくていいよ?」
おにぎりマンの優しさは、無視された。
「して」
フジキちゃーんは、
ストローを噛みながら言った。
「私が、どうしてこうなったか」
トッピングおじさんは、
黙って唐揚げを口に運ぶ。
止めない。
止めると、死ぬタイプの回想だ。
――私が生まれたのは、
設定資料集の余白。
「え?」
「文字数が余ったページ」
おにぎりマンが素で聞き返す。
「作者がね、
“女の子も欲しいな”って」
「軽っ!!」
「そう。
その瞬間、私は生まれた」
フジキちゃーんは続ける。
「最初は、
名前もなかった」
「じゃあ“フジキちゃーん”は?」
「後付け」
「全部後付けじゃん!!」
――最初の私は、
ただの“クール美女”枠。
「喋らない。
笑わない。
たまに風になびく」
「量産型!!」
「でも、ある日」
彼女はコーヒーを一口飲んだ。
「作者が言ったの」
『強くしすぎた』
「……うん?」
「“バランスが崩れる”って」
トッピングおじさんが、
ここで初めて口を開く。
「それで?」
「削除予定になった」
「急に現実的!!」
――消される前に、
私は学んだ。
「何を?」
「作者に好かれる方法」
フジキちゃーんは、
淡々と告げる。
「無双すること」
「間違ってないけど!!」
「読者が“強すぎw”って言うくらい、
やりすぎること」
おにぎりマンは、
嫌な予感しかしなかった。
「つまり……」
「そう」
フジキちゃーんは頷く。
「私は、
狙って壊した」
「世界を?」
「設定を」
――そこから先は、早かった。
「敵が増えた」
「倒した」
「評価が伸びた」
「削除できなくなった」
「作者、困った」
「私、残った」
「世界、歪んだ」
箇条書きで語られる、
最悪の成功体験。
「だから私は、
ヒーローでも、
ヴィランでもない」
フジキちゃーんは言う。
「作者の都合の結晶」
ファミレスの照明が、
一瞬チカついた。
「……納得できない」
おにぎりマンが絞り出す。
「そんな理由で、
あんなに強いの?」
「できないでしょ」
即答。
「納得されたら、
弱くなる」
トッピングおじさんが、
伝票を持って立ち上がる。
「じゃあ、まとめるぞ」
「何を?」
「フジキちゃーんは」
一拍置いて。
「説明すると死ぬキャラだ」
「便利すぎる!!」
その夜。
神・エンジョウ・サクシャは、
モニターを睨んでいた。
『……こいつ、
想定より生き残るな』
世界の端で、
また一つ、設定が崩れた音がした。
これは――
誰も納得しない過去が、
最強の理由になった回。
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