第3話 フジキちゃーんが動く日は、世界がだいたい
終わる
その日、
おにぎりマンは悟っていた。
「……今日、俺いらなくない?」
縛られてはいない。
飛べる。
パンチも出せる。
なのに――
完全に置物だった。
理由は一つ。
フジキちゃーんが、
静かにヒールを鳴らして前に出たからだ。
「下がって」
「え?」
「邪魔」
短い。冷たい。完璧。
目の前には、
バイオマン配下の量産型バイオ兵が十数体。
見た目は全部「失敗した特撮」。
「フジキちゃーん、危ないよ!」
おにぎりマンの忠告を無視し、
彼女は手袋を外した。
その瞬間。
空気が変わった。
「……開始」
フジキちゃーんが指を鳴らす。
――パァン。
一体目の首が、音もなく落ちた。
「え?」
誰の声か分からない。
たぶん世界。
二体目、三体目。
ムチが閃く。
ベシッ、ベシッ、ベシッ。
叩いた“つもり”の動きで、
敵がまとめて壁にめり込む。
「ちょ、ちょっと待って!
それ、何ムチ!?」
「設定上、何でも切れる」
「雑すぎる!!」
フジキちゃーんは振り返らない。
「この世界、
設定が雑な方が強いの」
名言が、軽く投下された。
そこへ――
「フハハハハハ!!
さすがだな、フジキちゃーん!!」
屋上からバイオマンが拍手していた。
「だが!!
貴様も“女王枠”!!
いずれ退場だ!!」
フジキちゃーんは、初めてバイオマンを見た。
そして――
ため息をついた。
「……あんたさ」
「何だ?」
「喋る前に、近づけ」
次の瞬間。
彼女の姿が消える。
ドン。
バイオマンが地面に叩き落とされた。
「な……!?」
フジキちゃーんは、
バイオマンの胸ぐらを掴み、持ち上げる。
「私はね」
耳元で囁く。
「ヒーロー枠でも、ヴィラン枠でもない」
「ぐ……!」
「“無双しても許される枠”」
バキィッ!!
拳がめり込む。
バイオマンは、口から緑の何かを吐いた。
「さ、さすがに強すぎだろ!!」
おにぎりマンが叫ぶ。
「出番、奪ってるよ!!」
「安心して」
フジキちゃーんは、
バイオマンを投げ捨てながら言った。
「あなたは“最後まで残る系”」
「それも嫌なんだけど!?」
バイオマンは、ふらつきながら立ち上がる。
「……覚えていろ、フジキちゃーん」
「忘れる」
即答。
バイオマンは、
何も言い返せず、煙と共に消えた。
戦闘終了。
街は、静まり返っていた。
「……フジキちゃーん」
おにぎりマンが恐る恐る聞く。
「君、何者なの?」
彼女は、ヒールを履き直しながら答えた。
「元・作者のお気に入り」
「最悪の肩書きだ!!」
トッピングおじさんが肩をすくめる。
「だから言っただろ」
「?」
「女王様は、世界を壊す」
その夜。
フジキちゃーんは、
何事もなかったようにコーヒーを飲んでいた。
その背後で、
世界のどこかにヒビが入った音がした。
これは――
フジキちゃーんが本気を出した、最初の回。
そして、
神が少しだけ焦り始めた回でもある。
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