第8話

自分がしてきたこと、


選んできたことが、


全部ゆっくりと重さになって


背中にのしかかっていく。



「プライベートで会っても、

ホテルばっかやん。

それが悪いとかじゃなくて……

なんか、

俺のこと、ほんまに“彼氏”って

思ってくれてるんか不安になる。」


その言葉が胸の奥まで刺さって、

私は息を飲んだ。



返事が詰まって出なくて、


焦りが一気に込み上げてくる。


どうにかしなきゃって思って、


私は慌てて口を開いた。



「……今日、アフター行こう。

そこでちゃんと話そう?」



自分でもわかるくらい必死な声だった。


逃げたい気持ちを必死で隠すみたいに。


でも彼は視線を逸らさなかった。


むしろ少し強い口調で返してきた。


「違う。

そういうことちゃうねん。」


グラスの縁を指で押しながら、


そのまま続ける。



「店の延長みたいなん、もうええねん。

アフターも仕事の一部やろ。

そういう“場所”で話したいんちゃう。

……ほんとのこと、教えて欲しいだけや。」



その声は怒っているというより、


必死に自分を保ってるみたいに震えていた。


私は一瞬言葉をなくした。


彼のまっすぐな目に捕まって、


逃げ場も、言い訳も見つからなかった。


自分の中で濁してきたものが、


全部目の前に広がるみたいで。



胸の奥がずっと痛かった。


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