第3話

感情なんて動くはずないと思っていた。

でも——。


仕事でしんどい時に優しい言葉をくれたり、


酔ってない時の落ち着いた声を聞くと安心したり、


不意に見せる真面目な表情に触れるたび、


少しずつ、少しずつ、心が揺れた。



気づけば、


帰れば待ってくれていた彼氏との会話は減っていき、


胸が鳴るのは新しい相手のことばかりになっていた。


その時初めて、


残らないと思っていたものが残ってしまったことに気づいた。


“お金でも、仕事でもなくて、

一番重いものが残ったんだ。”


罪。


それは誰にも見えないし、


触れられないし、


重さも形も説明できない。


でも確かに私の心の底に沈んで、


動くたびに音を立てる。


“どっちにも行けない”


そんな場所に、私は立ち尽くしていた。


夜の光は今日も変わらず眩しい。

だけど、


私の世界は前よりずっと暗かった。

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