第2話

その夜、久しぶりに来たお客さんがいた。


何度か店に来てくれたことはあるけど、


喋ったことはなくて、


最初はお互いよそよそしかった。


でも、気づけばボトルがどんどん空いて、


くだらないことで笑い合って、


お互いベロベロになって、


閉店後の流れでふらふらとアフターに行ってしまった。


その夜のことは、思い出すたび胸が痛む。


罪悪感で頭が締め付けられる。


彼氏の顔も浮かんで、吐きそうになるほど後悔した。


——帰りの車。


静かで、酔いも少し醒めてきて、


後部座席の窓の外が流れていく。


降りる直前、

運転席の彼がぽつりと聞いた。


「……付き合う?」


その声は思ったよりまっすぐで、


逃げ場がなくて、


答えを求められていた。


私は静かに頷いた。


顔を見せたくなくて、


俯いたまま、小さく。


自分が何をしているのか、


どうして頷いたのか、


わからないまま。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る