第7話 ライナ散る
「んっ!? 警報? おかしいわね、このエリアで警報なんて……」
原理は分からないが突然頭の中に警報音のようなものが鳴り響いた。
先頭を走っていたライナが立ち止まり、周囲をキョロキョロ見回した始める。他の魔法少女達も脚を止め、頭の中に鳴り響く警報に不思議そうな表情を浮かべながら周囲を窺っている。
「みんなチョーカーに触れれば、警報は消えるわよ」
ライナの言葉に従い、首に嵌められたメタルチョーカーに触れると警報が消えた。何だったんだ? そういえば通信機の機能があるとか言ってたけど、これがそれか?
「はい、みんなここに整列ー!」
ザワついていた魔法少女達はライナの指示に従順に従い、少し広めの公園の中に40人の魔法少女が整列していく。何というか、中学生に上がったばかりのような少女達が公園に並ぶ姿は、まるで遠足のようだ。
俺とエマは目くばせをして他の魔法少女達の後ろに続く。もう少し打ち合わせをしておきたかったが、エマなら臨機応変に合わせられるだろう。エステラは……まあ何とかなるだろ、多分。
「少し調べてくるから、あなた達はここで少し待っていなさい」
ライナは整列している俺達を置いて、ピョンピョンと近くの5階建てのマンションの外壁をジャンプで登っていく。
「おおー……」
肉体を魔力で強化している魔法少女の身体能力の高さを目の当たりにした俺は、思わず驚嘆の声をあげた。
完全に人間技ではないその動きに、他の魔法少女達も感心したような声を上げながら、マンションの屋上の縁に立ったライナを見上げた――
「えっ……」
閃光と衝撃音。一瞬何かが光ったと思ったら、ライナが立っていたマンションの縁ごとライナの下半身が消えていた。
ライナの上半身は一瞬中空にとどまり、ボタボタと赤い雨を降らせながらゆっくりと落下してくる。
「………………」
スローモーションのようにゆっくりと、唖然とした表情のままのライナの上半身が血と臓物と瓦礫の雨と一緒に降ってくるのを、俺は立ち尽くして見つめることしかできなかった。
唖然とした表情のままのライナの上半身は瓦礫と共にゆっくりと降下して……ドンという音と共に着地、赤い霧と共に細かな肉片となって周囲へ飛び散った。
「えっ……」
地面にへばりついた肉片の中、かろうじて形が判別できるドロリと飛び出したライナの目玉が俺を見つめている……。
さっきまで言葉を発していた人間が目の前で血と臓物と肉塊へと変わり果てる。その衝撃に完全に思考は停止。
「えっ、あっ!?」
隣のエマの呟きが聞こえたような気がする……が、その時、2度目の閃光と衝撃。身体がふわりと浮き上がる感覚と同時に、全身をハンマーで殴られたような衝撃。
「っ……」
爆風に吹き飛ばされながらグルグルと回転する視界の隅に、バラバラになってちぎれ飛ぶ魔法少女達の肉体と、腹部が消し飛び上下に別れたエマが崩れ落ちていく姿がコマ送りのように見える。
そして3度目の閃光と衝撃。
全身に強烈な衝撃を受け、俺は天地も分からぬまま吹き飛ばされた。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「うっ……」
ブロック塀に激しく身体を打ち付け朦朧としていた俺は、全身の痛みで我に返った。
一息入れる暇もなく、舞い上げられた瓦礫が上空から降ってくる。両腕で頭をガードしながら、ガンガンと瓦礫が当る痛みに耐えながら、
身体の周囲に薄い魔力の幕が形成されれ、瓦礫が身体にぶつかっても痛みが無い。瓦礫は身体に当たっているように見えるのだが衝撃を感じる程度だ。
「何が起こってる……他の連中は?」
軽く頭を振り、状況を確認しようと立ち上がろうとすると、ライナの血まみれの呆然とした表情、腹をぶち抜かれた内臓をぶちまけるエマの姿がフラッシュバックする。
「くっ……」
さっきまで存在していた公園、道路、建物が、今では全て一緒くたに瓦礫の山に変わり果てている。ライナやエマの身体もすでに瓦礫に下に埋まっているのだろう。
五感はハッキリしているのに、まるで夢の中にいるように妙に現実感がない。
『敵』ってやつの攻撃……なのか? ライナもエマも死んだ。エステラは? 他の連中は何人残ってる? どうする? 逃げる? 逃げられる? んっ!
首筋にわずかな痛みを感じて頭を上げると、少し離れたビルの屋上から背丈程の長い棒状の物を持った3人の人影が飛び降りてくるのが見えた。
魔法少女……じゃない! あれが『敵』? 『敵』!?
そうだあれは『敵』、あれが『敵』だ! 『敵』、『敵』は殺さないと!
『敵』を殺す。そう殺す! 殺す! 殺す! 殺す! 殺す! 殺す! 殺す! 殺す! 殺す! ぶっ殺す!
『敵』を確認した瞬間、俺の中の不安や恐れや一気に吹き飛ぶ。腹の底から得体のしれないマグマのような熱く激しい怒りが沸々と沸き上がり、暗い殺意に思考が塗りつぶされていく。
『殺す!』 『必ず殺す!』 『絶対に殺す!』 『殺す! 殺す! 殺す! 殺す!』
俺の中で激しい怒りと殺意が渦巻く。同時に、『ヘルマーダー』があれば確実に敵を殺すことができるという絶対的な自信と高揚感が全身に漲ってくる。
ライナの血まみれの呆然とした表情と、臓物をまき散らしながら倒れていくエマの姿がフラッシュバックし、制御できない怒りと巨大な殺意が俺の中で暴風雨のように暴れまわる。
「うおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーー!!」
鎧のような衣装の金髪と赤髪と青髪の3人の『敵』が滑るように近づいてくるのを視認し、俺は我知らず咆哮を上げる。
俺の叫びに呼応するかのように、生き残った魔法少女達が瓦礫の中から立ち上がり、俺と同じように叫び声を上げ始める。
「我が盟友『
怒りと圧倒的な殺意に加え、高揚感と万能感が全身に漲っている。
周囲の魔法少女達も、『敵』を屠らんと自分の魔法具を召喚する。同じ敵に対しての怒りと殺意が魔法少女達と共鳴し、高揚感と一体感が溢れ出す。
先頭を滑るようにこちらに近づいてくる鎧の金髪へ向かって見える、ボンヤリとした光が収束していき、最適な弾道が道しるべのように光のラインとして浮かび上がる。照門と照星を『フォーサイト』の導きに合わせ……。
「……っ!?」
唐突な違和感。
「何だ? 何か、何かがおかしい……」
何かがおかしい。俺は射撃姿勢を崩しその場にしゃがみ込んだ。高揚感と万能感、そして俺の中で荒れ狂う怒りの感情に抗い、必死に思考に集中する。
何だ? 何がおかしい? 俺は何かされたのか? 痛み……そうだ首に一瞬痛みがあって、何か打たれた!? 中和剤……確かアイテムの中に中和剤があったはずだ!
熱に浮かされたような高揚感と万能感と、理不尽に荒れ狂う怒りと殺意……俺の中で荒れ狂う異常な感情を必死で抑え込み、マギリングでショップ機能を起動。
中和剤のアイコンをタッチすると、魔法のようにアイコンと同じ
「ふぅーーーーーーっ、ふぅーーーーーっ、ふぅーーーーーっ、ふぅーーーーーっ」
中和剤を打ち終えると
「くっ! 連中、チョーカーに何かクスリを仕込んでやがったな」
俺は『千桜』のやり口に毒づきながら、瓦礫の影へ移動して『敵』から身を隠した。
次の更新予定
魔法少女ダイアリー♡ 鈴森京也 @Suzumori
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