第4話 ドキドキ、リリナの自己紹介♡

 ライナの前に出ると、他の少女達と同じように大きな鏡の前に立たされ、鏡に写る変わり果てた姿を見せられる――。


 うーん、どうも現実感がない。本当にこれは俺か? 結構可愛いな。


 到底自分の姿だとは思えず、思わず鏡の中の少女に見入ってしまう。


 プラチナブロンドの髪をリボンでツインテールにまとめ、白い肌の端正な顔立ちにネコのようなクリクリとした瞳が愛らしさを引き立たせている。


 スレンダーな身体にまとった軍服風の衣装が小悪魔的な顔つきにマッチし、思わず見とれてしまうほどに蠱惑的な魅力を放っている。少し短すぎるスカートが気になるが……。


 しかし……この外見、ゲームやアニメのテンプレツンデレキャラっぽいな。


「どう、今の自分の姿は?」


「テンプレのツンデレキャラって感じですね、結構可愛い……」


 自分の容姿に見とれていた俺は、不覚にも思ったままの事を口にしていた。全身から冷や汗が溢れてくる。


「アハハ。本当! ツンデレキャラっぽいデザインよねー。あっ、そうだ! ねえ、ねえ、『あんたの為じゃないんだからっ! カン違いしないでよね!』って言ってみて!」


 なんだ、それ……。


「ほらほらぁ、早く早くぅー!」


 なに言ってんだコイツ。と思ったものの、逆らって大丈夫なんだろうか? どう対応していいのかイマイチよく分からない。


「あの、できれば遠慮したいんですが……」


 一応言うだけは言ってみることにした。


「ん? へー、指導教官の私が頼んでるのに、リリナちゃんは嫌なんだ?」


 ライナはニヤニヤと薄っぺらい笑顔を浮かべながら、俺を見つめてくる。


「…………」


「私が頼んでるのに、嫌なんだぁ?」


 ライナは不気味な薄ら笑いを俺へと向ける。俺はこれ以上ライナに逆らうのはマズいと判断。ライナが満足するためにツンデレキャラを演ることにする。


「分かりました。上手くできるか分かりませんが、やってみます……んっ、んんっ」


 昔見たアニメのツンデレキャラを思い出す。確かこんな感じだったはず……俺はライナに人差し指を向けると――。


「あ、あんたの為じゃないんだから! カン違いしないでよね!」


 今の俺のツンデレキャラっぽい声と台詞がマッチして、悪くなかったんじゃないか? 何となくそう思ったのだが……。


「…………………………」


 全員沈黙……他の少女達から、リクエストしたライナまで黙り込み、気まずい沈黙が、部屋の空気を支配する。


「あっ、あうっ……」


 俺は耳まで真っ赤になった。耳まで赤くなってるのが自分で分かるって凄いことだろ? それくらい真っ赤になった。


 え!? ううっ……ど、どうしよう?? 頭の中が真っ白になってオロオロと立ち尽くしていると――


「プッ、アハッ、アハハハハハハハハハハハハハハハッーーー!」


 突然ライナが腹を抱えて笑い出した。


「アハハハハッー! 最高っ! 所在無げに真っ赤になってモジモジしてるところまで最高にツンデレ娘だわ! 可愛い! あんたイイわ!」」


 ライナは腹を抱えて笑い続けている。


「いやーウケるー! 最高っ! 見た目含めていいキャラしてるわー!」


 キャラって……あんたが無理やりやらせたんだろ!


 さっきまでのイジワルお姉さんぽい態度から一転、止まらぬ笑いに肩を震わせながら目の端の涙を拭い、俺の肩を気安く叩いてくる。


「あ、ちょい待ち。動画撮るからもう一回!」


 ライナはスマホを取り出そうと自分の服をごそごそと探り始める。ふざけんな!


「すいません。動画はカンベンしてください……」


 俺は光速でライナに詫びを入れる。あんな姿が映像に残されるとか死んでも御免被りたい。


「えー、いいじゃん、いいじゃん! 可愛いかったって! 後で動画送ったげるからさ。もっかいツンデレやってよー! メッチャ可愛いから絶対バズるって!」


 ライナは嬉しそうに八重歯を光らせながら、スマホを取り出す。バズられて堪るものか! 混乱した頭で何とかライナを思いとどまらせる方法を考える――。


「ライナさん、ここではスマホは使えませんよ」


「あっ」


 赤髪の言葉にライナはハっと我に返ったように叫び声を上げた。


「それに、今回はライナさんにとって大事なミッションだったと思いますので、真面目にやった方がいいのではないでしょうか?」


「あーーっ! そうだったわね……しょうがない、じゃあツンデレちゃん、ちゃちゃっと魔法具の召喚いってみましょうか。動画は戻ってからねー♪」


 動画など撮らせて堪るか! あと『ツンデレちゃんじゃなくてリリナです』と言おうとも思ったが、口答えと思われるのもリスクだと判断、黙っている。


 とりあえずライナの命令に従い、俺は自分の魔法具を召喚する。刷り込まれた記憶の知識で魔法具の召喚のポーズを取ると小声で呪文を呟く。


「我が永遠なる魂の盟友、『地獄の殺戮者ヘルマーダー』よ、殺戮の時きたれり。地獄の底より我が元へ来たれ。『地獄の殺戮者ヘルマーダー』召喚!」


 完全に中二病全開のポーズと共に呪文を唱え終えると、目の前に今の俺の背丈程もある巨大な銃が現れた。俺の隠密行動を主体とするマギドールとしての特性のせいか、魔法発動光の眩い光はない。


 普通の人間であれば、この小柄な体格で、この大きさの銃をまともに撃つことはできないだろう。魔力によって身体的能力が強化されたマギドールの身体であればこそ、この巨大な銃を十全に扱うことができる。


「うわっ、凄く大きな銃ね」


 ライナが呟くように言った。素で驚いているようだ。マギドール達の魔法具は多種多様だったが、背丈を越えそうなほど大きい俺の魔法具は珍しかった。


「『地獄の殺戮者ヘルマーダー』です」


 俺の魔法具地獄の殺戮者ヘルマーダーは、ボルトアクションの大型ライフルで、総弾数は3発と少ないながら威力は強力だ……と俺の刷り込まれた記憶が教えてくれている。


「後は『フォーサイト』っていう、敵の弱点を見破ったり、照準能力エイムや射撃能力を強化する魔法が使えます。えっと効果が発動している間、魔力を消費する……みたいな感じです」


「敵の弱点を見破るってのは便利そうだけど、他の子達と比べると少し地味ね……他にはないの?」


 他のマギドールは何種類かの魔法が使えるようだが、俺の魔法は『フォーサイト』という補助魔法的なもの一つだけで、確かに地味と言われると言い返せない。


「ええと……他にはありません」


「そうなんだー」


「そうなんです……」


 地獄の殺戮者ヘルマーダーは遠方からの狙撃がメインなので下手に目立たない方がいいし、威力は凄いんだと俺の刷り込まれた記憶がいっているが、確かに地味という評価はぬぐえない……。


「えっと……その、何かすいません……」


「まあ、ないならしょうがないわね! ツンデレちゃんはキャラ立ってるからいっか!」


 いいのだろうか? まあ悪いと言われてどうしようもないんだが。


「大体分かったわ。うん、ご苦労様。ツンデレちゃん、もう戻っていいわよ」


「はい、ありがとうございました……」


 ようやく俺の番が終わったらしい。俺は『地獄の殺戮者ヘルマーダー』を送還すると自分の席へと戻った。


 俺が座ると、銀髪縦ロールのエステラが目をキラキラさせて顔を寄せてきた。


「姐さん、さすがっス! あのドデカい銃パねぇっス! それにツンデレちゃんでしたっけ。あんなヤバそうな奴に、あだ名をつけてもらえるなんて凄いっス! パねぇっス! ツンデレちゃんマジで凄いっス!」


 うるせえなコイツ。見た目が美少女でもイラっとくるわ。とりあえずツンデレちゃんはやめろ、確かの見た目はツンデレちゃんだけどさぁ……。


「無駄話ししてると目を付けられるから、しばらく大人しくしていた方がよさそうだぞ」


「そ、そうっスね……了解っス」


 その後、他のマギドール達の能力確認が進んでいくのを眺めながら、俺は俺の知らない『刷り込まれた記憶』を確認することにした。


 このマギドールの身体能力に魔法具、左手首に装備したブレスレット型携帯情報端末であるマギリングを使用するための知識、日本語以外のいくつかの言語能力……それが俺が知らないはずの記憶の全て……のようだ。


 ライナの言っていたマギドール……じゃなくて魔法少女の組織、『千桜』のことはまったく知らないし、『敵』についての具体的な情報もない。分からないことは多いが、最低でも自分の能力が把握できるだけで満足するべきだろうか。


 しばらくして、40人全員の自己確認が終わる。


 魔法少女達は剣、杖、盾、弓など古風なものから、拳銃にサブマシンガン、機関銃、ライフル銃に背丈を越えるバカでかい剣や盾まで多彩な魔法具を持っていたが、多様性はあるが統一性はまったくない。


 個々の魔法少女の魔法具がどうやって決まるのか知らないが、これだけ装備や能力がバラバラだと軍隊のような集団戦は難しいだろう。


 ああ、だからRPGみたいにパーティーを組むって発想になるのか。このに居る連中とパーティーを組むことになるなら、ちゃんと全員の魔法とか魔法具は覚えておくべきだった。

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