第2話

 ……美術館の中は、想像していたものとは違い、そこまで美しいものが大量に置かれているわけではなかった。

 たくさんの美術館とされるものが並んでいるが……それほど美しくは感じられなかった。なぜなのかはわからない。わからないが、それを見た親たちが自分の表情を見て悲しんでいるのだろうと感じた。

 

「おい、どこにいくんだ!?」


 ……感じてしまったからこそ、僕はそこから逃げ出した。母が悲しんでいるのを見て、僕は自分の罪深さに耐えられそうもないことを自覚した。

 僕は、彼らを泣かせたくはないのだ。

 だから、だから、僕は逃げ出すために走り出した。


 多分……無我夢中だったんだろう。

 

 気付いた時には、周りには誰も存在しない場所に立っていた。冷静になって戻ろうと考えていた時にあることに気付いた。

 無我夢中で走っていた時、僕は解放されているような気がしたのだ。当然、何から解放されたのかはわからない。わからないけど、あの時の自分はたぶん……笑っていた。当然、なぜ笑っていたのかもわからない。


 少し冷静になってきたのか、周りの光景を知ることができた。


 灰色のカーペットと壁や、ランプはモダンな雰囲気を醸し出している。だが、それを台無しにするダンボール箱と、雑多な棚はここが美術館のバックヤード……もしくは、倉庫。あるいは、今は使っていない場所であることを教えてくれる。


「……帰りたくない」僕はそうつぶやいた。

 多分、母にどんな顔して会いに行けばいいのかが分からなかったのだろう。


 僕は歩き出した。


 歩いていると、様々な絵画と遭遇した。絵画は、南極にある山が描かれたものなどで……僕にとっては興味深いものが沢山存在していた。

 ここはやはり美術館内なのだろう。


 そうこうしているうちに、ドアが存在していることに気付いた。ドアには鍵がかかっていて開けられない。

 普通ならそれを知って、引き返すはずなのに……引き返せなかった。僕自身なぜなのかは分からないのだが……確信があった。

 当然、なぜ確信しているのか、なにを確信しているのかはわからない。


 ……僕はドアを突き破った。


 それは、理解できなかったからなのか?

 それとも、理解したくなかったからなのか?


 いずれにせよ、ドアの先には絵画があった。


 絵画を直視する。


 その絵画は、海底の都市を描いているのだが……まるで悪夢をそのまま描いているかのようだと感じる。

 だが、なぜかこの絵画に親近感を感じてしまった。

 なぜなのかはわからない。色、材質、質感、などなどの絵画を構成するすべてが気持ち悪さを掻き立てるこの絵に親近感を感じてしまうのだ。

 当然、この海底の都市に訪れたことはない。

 なのに、なぜ親近感を感じるのかを考えてしまったから……僕は全てを理解した。


「ああ、ここが僕の家だったのか」


 ……絵画のキャプションボードにはルルイエの浮上とだけ書かれていた。

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