第3話:その報告書、まだ羊皮紙(手書き)で出してるんですか?

【AM 9:00 勇者パーティ・泥沼の定例会】


​「……ちょっと、戦士さん。昨日の『スライム3匹討伐』の報告書、字が汚くて読めないんだけど。書き直して」


​勇者が、泥と血に汚れた羊皮紙を叩きつける。

徹夜明けの戦士は、充血した目で叫んだ。


「勘弁してくれよ! 戦闘が終わった後に、焚き火の明かりで羽ペン走らせるのがどれだけ苦行か分かってんのか!? 指が震えて書けねえんだよ!」


​「ルールなんだからしょうがないだろ! 王宮に提出しないと、経費(薬草代)が降りないんだ!」


​勇者たちは、魔王を倒す時間よりも、**「アナログな事務作業」と「内輪揉め」**に膨大な時間を溶かしていた。



​【同時刻 魔王軍・戦略イノベーションルーム】

​一方、魔王城では。


魔王は玉座に座ることなく、スタンディングデスクでタブレットを操作していた。


​「……よし、全軍の『魔力消費ログ』を自動集計完了。スケルトン兵たちの消耗が激しいな。来週はメンテナンス休暇を増やそう」


​そこへ、一人の魔導師が顔を出す。


「魔王様、今月の『スキル習得進捗』のデータです。生成AI(詠唱支援AI)を導入したおかげで、若手オークの魔法習得速度が200%向上しました」

​「素晴らしい。浮いた時間で、彼らの**『キャリアカウンセリング』**の枠を確保しておいて。あと、メンタルが不安定なデーモンには、産業医(高位神官・闇堕ち済)との面談をセットしてくれ」


​魔王軍では、すべてのルーチンワークが魔導システムで自動化されていた。


浮いた時間はすべて、**「部下のケア」と「教育」**に投資されている。


​【PM 2:00 戦場にて】


​ようやく報告書を書き終え、疲労困憊で現れた勇者一行。


目の前に立つのは、最新鋭の装備に身を包み、肌ツヤが異様に良いゴブリンの精鋭部隊だ。

​「……あれ? ゴブリンってあんなに強かったっけ?」


勇者が戦慄する。ゴブリンたちは、整然としたフォーメーションで、無駄のない動きを見せる。

​「勇者様、お疲れのようですね」

部隊長格のゴブリンが、爽やかな笑顔で声をかけてきた。


「我々、軍内の**『リスキリング研修』**で、対勇者用カウンター戦術をマスターしまして。あ、無理して戦わなくていいですよ。あなたのストレス値、今『危険域』だってうちのスカウターに出てますから」


​「リスキリング……? 研修……?」

​「はい。わが軍の離職率は0.01%。辞める理由が『寿命』以外にないんです。だって、頑張れば正当に評価されるし、失敗しても魔王様が『次への糧にしよう』って1時間も1on1(面談)で励ましてくれるんですよ? 辞める奴、バカでしょ」


​最強の魔法使いが、乾いた笑い声を漏らす。

「……ねえ勇者。私たち、昨日の夕飯、そこらへんのキノコだったよね? 彼ら、たぶんさっき『高タンパクなアスリート飯』を社食で食べてきてるよ」

​「うるさい! 勇者は……勇者は、苦労して強くなるもんなんだ! システムなんかに頼るのは甘えだ!」


​そこへ、労基署の天使がスッと現れ、勇者に「過労死ライン越えの警告書」を突きつけた。


​「勇者様。アナログな事務作業による睡眠不足は、立派な自己管理不足です。DX(魔導化)を怠り、部下のメンタルを削り続けるあなたに、リーダーの資格はありません」



​「勝てるわけないでしょうがーーーー!!!」

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