第11話 11. 魔物
「うううっ何が何だかわけわからない。
フィン、説明しないさいよ」
陽翔は涙を拭い、笑った。
「そうだね、いつか話すよ。遅くなる前に帰ろう」
釈然としない気分だったが、
追及することを何故か憚れたクリスだった。
「まったく少しはレディの扱いに慣れなさいよ」
クリスは歩き始めた陽翔の隣に並ぶと一緒に歩き始めた。
翌日、チェザリーノは講義に現れなかった。
代わりの講師が教壇に立っていた。教室はざわついていた。
代理講師が事の経緯を説明した。
北方、いわゆる旧魔王領で大量の魔物が発生し、
南下している。
そのため各国の騎士団、魔術師団、雑軍、傭兵が
緊急対応のために召集されているようだった。
チェザリーノは、優秀な傭兵として、
冒険者ギルドより依頼を受けたとの説明だった。
陽翔は話を聞きながら、どうにも落ち着かなかった。
たまたまだろうかそれとも予定調和の一幕なのだろうか、
陽翔には判断する術がなかった。
陽翔はざわつく周囲の声に耳を傾けた。
「そんな話、聞いていたか?」
「いや初耳だよな。
そもそも魔物って、野獣より弱いじゃん」
「そうだよな、大量発生しても怖がることないよな。
単に数が多いってことだろうし」
「それもそうか。大したことないよな」
大方の同級生の話は、魔物の大発生ってことで
楽観的に捉えていた。
「ねえ、フィン、あんた、魔物って倒したことあるの?」
クリスの声で陽翔は、現実に引き戻された。
「えっええ、まあ、当方、辺境に領土を持つ
しがない子爵家の6男なので、ありますよ」
「いちいち皮肉ならないでよ。
実際のところ、魔物って強いの?」
クリスの目は興味津々だった。
それだけでなくクリスの話が聞えた周囲の同級生も
それとなく耳を傾けていた。
「弱いよ。年少の僕ですら倒せたから。
でもそれは単に弱い魔物だからだよ。
真に強い魔物とは会敵したことない」
「ふーん、そうなんだ」
話を聞いてきた割には、クリスの反応は弱かった。
陽翔の話が彩られた冒険譚のようなものでなく、
ごくありきたりな内容だったからだろう。
「ただ懸念する点はあるよ」
「えっ何々?」
クリスは陽翔の言葉に喰いついた。
「膨大な数の魔物、尽きることなく湧き出てくるならば、
如何なる戦士、魔術師であろうともいずれ体力、
魔力が尽き、精神が削られて、魔物の大軍に
のみ込まれるだろうね」
旧魔王領に派兵された各国の騎士団、魔術師団、
雑軍、傭兵は、当初、破竹の勢いで魔物の軍勢を
駆逐していった。
しかし、日を追うごとにその勢いに陰りが見え始めていた。
軍の前進は完全に止まった。
そして、各国の軍は、押され、じりじりと後退し始めた。
討伐戦は、長期化の様相を見せ始めた。
半年も過ぎると、国を代表する高名な騎士、
世に謳われた賢者、名を馳せた冒険者の戦死や
行方不明の噂が巷で流れていた。
各国の軍は、自国防衛の優先を理由に撤退を開始し、
冒険者たちは、己の命を惜しみ、戦場より去った。
矢面に立たされた小国は呆気なく陥落し、
魔物に蹂躙され、領土は阿鼻叫喚の地獄絵図となっていた。
2年もすると魔物の大群は、ログリーナ帝国の
国境付近に現れていた。
それは、帝都全体に不安の影を落としていた。
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