第10話 10. 再会
練兵場は混沌としていた。
一人は、ぐるぐると床を転げまわり、
涙目で座り込むエルフの美女、
石像のように動かないエフルの少女。
しかし、その状況は永遠には続かなかった。
まず痛みより回復した陽翔が何とか立ち上がった。
そして、それを睨みつけるエルフの美女。
二人の視線が合った瞬間、陽翔はにやりとした。
それを涙目で睨み続けるエフルの美女。
陽翔は近づき、助け起こすために右手を差し出した。
エルフが陽翔の右手を握ると、助け起こした。
二人は見つめ合ったままだった。
「うん、やっぱり君だ。名前を呼んでいい?」
「いや王族にバレると困るんだ」
「そうなんだ、残念。いずれ話してくれるよね」
「そうだね。いずれ知ることになるさ、陽。
いや今はフィンか」
「その名でなく、僕の名前を呼んで欲しかったよ」
「ふふふ、以前より女性の扱いが
多少上達したようでなによりだよ。まあ、いずれな」
「分かった。そのときまで待つよ」
「それよりもだ!先ほどのアレはいただけないな。
クリスに何かあったらどうするつもりだ。
それにアレだ。あれは一生許さないからな」
そう言ってエフルの美女が大いに笑った。
そして、その姿はチェザリーノとなっていた。
クリスがおどおどしながら、話に割って入って来た。
「そのあの一体何が何だか。
チェザ先生が女性になっていて、
そのあの何が何だか」
声をかけられたエルフの美女がクリスに
向かって振り向いた時、既にチェザリーノだった。
「えっええ、ええ。一体何がなんだが」
クリスはチェザリーノを改めて目にしたとき、
更に混乱を極めた。
「今、見聞きしたことは、
フィンとの秘密に収めておきなさい。
もしくは、忘れなさい。
もし忘れないならば、学院で学ぶと同時に
フィンより学びなさい」
クリスはこくこくと可愛らしく首を上下に振った。
そんな二人の会話を聞きながら、
陽翔は自然に涙を零した。
ぎょっとした表情で陽翔を見つめるクリス。
やれやれといった表情のチェザリーノだった。
「ちょっとフィン、大丈夫。
もしかして、痛みが酷いの?」
「ふふふ、クリスはもう少し人の表情や
心を学んだ方が良い様だな」
チェザリーノは陽翔に近づくと軽く頭を撫でた。
「良く泣くところは変らないな。
それが君を君たらしめる証拠だな。
さて君らのデートを邪魔するのも悪いし、
今日はこの辺りでお暇しよう。
フィン、強くなりなさい。
そうすれば嫌でも再会できるさ」
舞い上がる一陣の風が陽翔とクリスの視界を遮った。
風が収まると既にチェザリーノの姿はなかった。
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