第5話 お風呂の香り

 ⋯⋯う〜む。


 これは事件だ。


 うちのお風呂に女子高生が入っているなんて! なんていうか、とんでもなく背徳感を感じてしまう。

 悪いことはしてない。しかしこの状況、彼女には悪意があれば、警察に通報されたりすることも考えられる。まあ、失うものが何もない僕には、そんなものは怖くはないのだが。


「ねえオジサン!!」


 ⋯⋯おい。風呂場から呼ばないでくれ。


「ねえ! オジサンてば!!」

「なんだ!?」


 僕は脱衣所の手前の扉の前から声をかけた。


「オジサンも入る!? オジサンもびしょびしょに濡れてたやん!?」

「ばっ、ばか! 僕はいいから、ゆっくり入れ!」 

「えへへ、照れてる」

「オジサンをからかうなよ。襲われても文句言えねぇかんな? んなことより、着替え、脱衣所にいくつか入れておくから、好きなの着てくれ! 母親のものと僕の部屋着を入れておいた」


 そう言って僕は脱衣所に着替えが入ったカゴを入れた。


「オジサン」

「⋯⋯なに?」

「おおきに♡」

「いいからゆっくり浸かれよ?」

「うん♪」


 はあ。だめだ。ストレスがひどい。


 僕は彼女に飲ませるためのカフェオレを作りながら、晩御飯をどうしようか考えていた。


 ガラリ。少しはにかみながら彼女が出て来た。母親のは少し小さかったのか、僕の部屋着を着ている。


「よく温もったか?」

「うん。温かった。タオル、髪乾かすのに一枚使つこうてます」

「うん、自由に使ってくれ。リビングに暖房入れて、温かいカフェオレを淹れてあるから、よかったら飲んでくれ」

「オジサン⋯⋯なんかごめん。んでから、ほんまにおおきにっ!」


 風呂上がりの火照った頬が、ほんのり紅く色づいて持ち上がった。

 ⋯⋯いい笑顔持ってんだな。


「ふふっ」

「あ、笑ろうた! なんか失礼ちゃう!?」

「あはは! 僕も風呂に入るよ。かまわず、ゆっくりしてくれ。ワイファイのパスはテーブルにメモを置いてるから」

「うん! おおきに!」


 はあ、ダメだな、男って。そんなつもりなくても女性として意識してしまう。毎日嗅いでるはずのお風呂の香りも、なんだかいつもと違う気がしてならない。


 なにも期待はしていないが、ムダに心音が速い。僕は⋯⋯。


 なにやってんだろう?




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