第6話 人生過渡期?

「こんなものしかないけど」

「ううん、ぜんぜん大丈夫」

「どちらでも好きな方、食べるといいよ」


 僕は駅前のスーパーで買った少し寄った弁当を出して整え、他に袋麺の塩ラーメンをつくった。冷蔵庫に残っていた豚肉を味付けして、冷凍庫のネギを乗せて出した。


「このラーメン、もろてええ?」

「ああ、遠慮なくどうぞ? 味付けは粉末なので大丈夫だろ。ははは」

「ほんでも、そのまんま食べるよりずっと美味しそうやわ! いただきます!」

「はーい」


 まあな。冷えた弁当よりは、温かいラーメンがいいよな? 僕も食べたかったよ。


「おいしい!!」

「そうか、よかった」


 ほんと、美味しそうに食べるな。


「オジサン⋯⋯ちょっと聞いてくれる?」

「ん?」

「うちな⋯⋯」

「うん」


 これから好物のミートボールを食べるところなんだが?


「高校卒業したら、働こうと思てんねん」

「ん?」


 おっと、真面目な話だった?


「早く自立して、オカンを解放してあげたい。そう、思てんねん。うちのオカン、未婚の母でな? 女手一つでうちのこと育ててきたから、オカンにも幸せになってほしいねん」

「うん」

「したらな? うちのオカン、自分のこと気にせんと進学でも専門学校でも行けって言うねん」

「うん」

「でも、うちは何もしたいことあらへんから、働く言うてんのに、オカン、ちゃんと将来考えなアカンうて聞かへんねん。せやから、ほっつき歩いてへんと勉強せなアカンうねんよ?」

「うん」

「どう思う?」


 いや、どう思うって、そんなの自分で考えることだろ? こんなオジサンに人生相談? どんな答えが返ってくると思ってんだ?


「僕ね、いま無職なんだよ」

「えっ!? ほんま?」

「うん。だから、人の人生相談にのってる場合じゃないんだよね? ⋯⋯まあ、すぐに何か始めようとは思ってないんだけど。なんだかやる気が出なくてさ」

「⋯⋯」

「ああ、去年の暮れに解雇されたんだ。そのうえ嫁に逃げられてさ、母親が亡くなって、いまここってわけ⋯⋯」


 ⋯⋯。


「なんかうち、自分が人生の過渡期な感じ出してたけど、オジサンの方がよっぽどたいへんやん!! どないすんの!?」


 どないすんの、とか言われても。


「どうもしないですけど?」

「そんな呑気な!!」


 と言ってもねぇ?


「じゃあ、どうしろと?」

「そらあ⋯⋯とりま仕事?」

「なんの? 僕も今年四十歳。再就職するにしても門戸は狭いんですよ。そしていまはなにもする気が起きなくて、ね⋯⋯」

「オジサン⋯⋯」


 女子高生に心配されるオジサンてどうよ。




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