4. 探索
雨が斜めに降り注ぎ、ぬかるんだ地面を叩く。
目の前にあるのは、土砂と、濁った水。折り重なった木、ゴロゴロと転がる岩。
(ふたりとも、この下に? 早く助け出さなきゃ!)
進もうとしたユーリを、止める手。
キーチェだ。
「落ち着いてください。今はまだ崩れる危険があります。まずは、探ってみましょう」
生命反応を探る、というのは医学的な魔導士でも難しいことだったが、魔力反応を探るということであれば、難易度は下がる。特に、
「
キーチェは、自身の魔力を細い糸のように伸ばしていった。
青い糸がキラキラと、雨の中を進み、それは土砂の中にも入り込んでいく。
キーチェは、自分から遠く離れた場所でも魔力を操作するのが得意な魔法使いだ。
雨が降り続く中、静かな魔法は輝き続ける。
しかし。魔法の糸は、何の反応も返さない。
ぼそぼそ……なにか囁いている青年団の声が、不安を煽る。
ユーリとキーチェが顔を見合わせていると、意外な方角から声が降ってきた。
「密度は満点、範囲も合格点だ。が、探す場所が違うよ」
笑いを含んだ声の主は――空に浮かんでいた。
(そうだ、風魔法!)
ソーカルの着ているボロボロつぎはぎのマントは、実は魔法道具。事前に風の魔法を仕込んであるので、簡単な呪文だけで素早く発動できるのだ。
ずぶぬれの黒っぽい塊が空からゆっくり降りてくる。
ユーリにも、そしておそらくキーチェにも。それは天からの贈り物のように感じられた。
「悪い、お荷物くんを抱えてたから、
「荷物は、もっと丁寧に扱ってくださいよ」
ソーカルの小脇に抱えられているトレフル・ブランが、文句を言う。
「さてなぁ。普段から生意気な荷物だからな、ポイ捨てしてやろうかな」
ソーカルはにやっと笑うと、視線の合ったユーリへ、わざと放って寄越した。
――ボスン。
受け止めた体は、雨に濡れているせいか意外と重い。
「あぁ、もう。運送業だったら、お客さんから苦情がく……」
「トレフル・ブラン、ありがとう!」
ぎゅっと、冷たい体を抱きしめるユーリ。
「助けてくれて、ありがとう。無事でいてくれて、ありがとう、本当に」
トレフル・ブランは、ゴーレムを、ユーリたちの盾として使ってくれた。その上さらに、土壁で土砂を押しとどめてくれたのだ。自分の防御まで手が回らなかったはず。
それでソーカルが、普段は「これは、おひとり様用の魔法なんだ。他人と仲良く空を飛ぶなんざ性に合わん」と言い張っている風魔法を使って、ふたりで空に逃れたのだ。
腕の中で、トレフル・ブランは、なにやら文句を言っているが、いつもの威勢はない。軽く背中を叩いて解放すると、今度はキーチェに捕まってお説教を食らっていた。これは、幸せな受難というやつだろう。
ソーカルは、青年団に向き直った。
「避難指示が遅れてすまなかった。けが人もいないようだ、今日のところは引き
もちろん、反対意見が出ることはなく、一行は宿に戻った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます