第10話「ダンジョン化した畑と、収穫という名の防衛戦」

 国からの認定を受けたことで、訪問者が増えるかと思いきや、今度は別の問題が発生した。

 畑の植物たちが、元気になりすぎたのだ。


「うわあぁぁっ! タマネギが! タマネギが襲ってくるぞー!」


 朝、畑の方からゴードンの悲鳴が聞こえた。

 駆けつけると、そこは戦場だった。


 直径1メートルはある巨大なタマネギが、根っこを足のように使って走り回り、冒険者たちに体当たりをしている。

 蔓(つる)をムチのように振り回すキュウリ。

 爆弾のように種を飛ばしてくるオクラ。


「これは……植物系ダンジョン!?」


 シルヴィアが杖を構えて防御壁を展開する。


「ノア様の魔力が強すぎて、植物たちが半ばモンスター化しています! 『意思を持つ野菜』……これはもう、ただの農作業ではありません!」


「いや、ただの収穫だよ!」


 僕は「豊穣の鎌」を手に、タマネギの群れに飛び込んだ。


「大人しくしろ! サラダにしてやるぞ!」


 僕が鎌を一閃させると、襲いかかってきたタマネギたちが一瞬で綺麗に皮を剥かれ、スライスされた状態になってカゴに収まった。

 鮮やかな手際だ。


「おお……! さすが旦那!」


 僕の【土壌改良】スキルは、土から生まれたものに対して絶対的な支配力を持つらしい。

 暴れるカボチャも、僕が手を触れて「美味しくなーれ」と念じると、途端に大人しくなり、コロンと収穫された。


 しかし、ゴードンたちは必死だ。

「このキャベツ、硬度がミスリル並みだぞ!」「ジャガイモが土遁の術を使って逃げやがった!」と叫びながら、剣と魔法で「収穫」を行っている。

 側から見れば、命がけのレイドバトルのようだが、彼らの顔は楽しそうだ。


「倒せば倒すほど、晩飯が豪華になるぞ!」

「経験値も美味いし、味も美味い! こんな最高なダンジョン、他になんてねえ!」


 そう、彼らにとってここは「食料庫」であり「修練場」なのだ。

 野菜と戦い、それを食べることで、彼らのレベルは異常な速度で上がっていた。

 ゴードンの一撃は、今や竜の鱗すら断ち切る威力を持っている。


「ふう、今日の収穫は骨が折れたな」


 夕方、山積みの野菜(モンスターの死骸とも言う)の前で、僕たちは汗を拭った。

 フェンも満足げに、巨大な大根を抱えている。


 この日以降、ギルド【グリーンハンド】の朝の挨拶は、「おはよう」ではなく「今日の敵(やさい)は強いか?」になった。

 平和な農家ライフとは程遠いが、まあ、みんな強くなってるし、いい運動になるからヨシとしよう。

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