第06話「みんなの家を建ててたら、いつの間にか要塞ができてました」

 水路が完成し、食料と水の心配がなくなった。

 次に必要なのは、増えた仲間たちが快適に暮らすための住居だ。

 今はまだテントや簡易小屋での生活だが、これから冬を迎えるにあたって、しっかりとした建物が必要になる。


「どうせなら、みんなが集まれる大きなギルドハウスを作ろう」


 僕の提案に、全員が賛同した。

 場所は農園の中央、小高い丘の上だ。


 建築材料は、またしても僕の出番だ。

【土壌改良】の応用で、土を圧縮して石材を作り出す。

 さらに、レンガやタイルも焼き上げる必要がない。魔力で分子レベルで結合させれば、ダイヤモンド並みの硬度を持つ建材が出来上がる。


「シルヴィア、設計図は?」

「はい、こちらに。機能性と防衛力を兼ね備えた構造にしました」


 シルヴィアの書いた図面は、もはや館というより城塞に近かったが、まあ頑丈なのは良いことだ。

 僕たちは手分けして作業を開始した。


 ゴードンたち冒険者組は、怪力自慢を活かして資材の運搬と組み立てを担当。

 野菜パワーで強化された彼らは、人間離れした動きで重い石材を軽々と積み上げていく。

 まるでパズルを組み立てるような速さだ。


 僕は、細かい内装や家具作りを担当した。

 ここでも【土壌改良】、というか【素材加工】に近いスキル活用が光る。

 木材(荒野の端に生えていた枯れ木を再生させたもの)を加工し、テーブルや椅子を作る。

 座り心地を追求し、少し魔力を込めて「疲れが取れる椅子」に仕上げてみた。


 さらに、農作業用の道具も新調した。

 これまでは適当な棒や石を使っていたが、鉄鉱石(地下を掘っていたら出てきた)を混ぜた土で、新しいクワやスキ、カマを作り出したのだ。


「完成だ。名付けて『豊穣シリーズ』」


 見た目は黒くて地味だが、軽くて丈夫、そして切れ味は抜群だ。

 試しにゴードンに渡してみる。


「おいおい、軽すぎるぜ旦那。こんなオモチャで……うおっ!?」


 ゴードンが軽く地面にクワを振り下ろした瞬間、衝撃波が発生し、地面が十メートルに渡って綺麗に耕された。


「……は?」

「あ、あれ? ちょっと魔力込めすぎたかな?」


「旦那、これ……そこらの聖剣よりヤバい気配がするんですが」


 ゴードンの手が震えている。

 まあ、効率よく耕せるなら問題ないだろう。


 そんなこんなで一週間後。

 丘の上には、立派なギルドハウスが完成していた。

 白亜の壁に赤い屋根。広々とした食堂に、個室も完備。地下には巨大な食料庫もある。

 見た目はペンション風だが、壁はドラゴンのブレスも弾く強度を持ち、窓ガラスは結界魔法が何重にも掛かっている(シルヴィア談)。


「すごい……これが俺たちの家か」

「夢みたいだ……」


 男たちが涙ぐんでいる。

 完成祝いに、看板を掲げることにした。

 名前はもう決めてある。


【農園ギルド・グリーンハンド】


 戦うためじゃなく、育てるための手。

 緑豊かなこの場所を守り、育てる者たちの証だ。


「よし、今日からここが僕たちの拠点だ!」


 僕の宣言に、歓声と拍手が湧き起こる。

 フェンも嬉しそうに「わおーん!」と遠吠えを上げた。


 しかし、この建物の完成度が高すぎたせいで、遠くから見ると「荒野に突如現れた謎の神殿」に見えてしまい、新たな巡礼者(?)を呼び寄せることになるとは、僕はまだ知らなかった。

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