第3話
「
「人間は古くより、祈りの領域を昇華させて神の存在に気付き、
至高天への道を辿って来た。
本当に優れた、美しい領域とは、
別の領域に忽然と表われるものじゃあないっていうのが俺の考え方だ」
メリクはラムセスの声を聞きながら、小さく笑んだ。
「人が星の真理に、
神に思いを馳せたように、
神が星の真理に祈れば、
そこに至高天の存在が必要とされる……。
ここにいる者たちは、自分たちの存在の上に更に天があることを望まない。
星の輝きも。
望まれなければ、星の光は見えない。
でも――見えないからと言って、そこに存在しないわけじゃない……」
独り言のように呟いたメリクの言葉を、ラムセスは最初は目を細めて、笑んで聞いていたが、徐々に真剣な顔で見つめるようになる。
やはりメリクは魔術のことを語らせる時、最も才能が輝いた。
もっと聞いていたいと思わせる、そういう感性が発露する。
思索にふけるその横顔に触れたくなったがラムセスは我慢した。
「あるかも、しれないもの」
これから生まれるかもしれない、その世界。
あるかも分からない世界。
でもあるはずと見通す者しか、いずれにせよ到達出来ない世界。
「第二の生が第一の生の繰り返しであった方が絶望だ。
あの第二王子はもうとっくに絶望してる。
それならお前が変わって、単純な繰り返しじゃないことを教えてやれ」
そこにあるものが努力し、苦しみ。
その果てに新しい知恵や、世界や、光を見い出す。
その世界に意味があると、彼は考えている。
ラムセスらしい考え方だと思う。
彼はそれを、自分自身で実践して来た。
「星は過去だけじゃなく、時の先にも確かに瞬くということを」
貴方の言葉を、もっと聞いていたいとメリクが小さく呟いた。
ラムセスは微笑ったようだ。
魔術のことでも
世界のことでも
自分のことでもなんでもいい
この人の声と、話を聞いていたい。
多分、……消滅するその時まで。
「いいよ」
なら話そう……ラムセスは笑いながら、手を伸ばして来た。
両頬に手の平が触れる。
話そうと言いながら、炎の魔術師は唇を重ねて来たのだった。
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