第二話 階段の先

 その扉は、小さく感じた。


 いや、扉だけじゃない。見える風景もなにか高く感じる。


 見渡すと壁には鏡があり、そこの、光景に目を疑った。


 見たことがあるようなが銃を片手に、扉に手をかけている。


 誰だ?


 いや、分かっているのだ。理解を脳が拒む。でも、それを無理やり思考で分からせる。迷ってる暇などないのだ!


 あれは、なのだ。


 この高い視界も、小さく感じる扉も、成長し、大人の背丈となったからなのだ。


 もう、迷わない、躊躇せずに扉を開けた。


 長い階段だ。


「おつか―――! あ! お前! 動くな! 司令部! 司令部!」


 階上から、声が響く。


 上を見上げるが逆光でよく見えない。何か嫌な予感を感じ、壁を背に向け、身を縮こまらせる。


 甲高い発砲音が連続して、降り注ぐ。


 まじかよ! 撃ってきやがった!


 なんで、俺が命を狙わなければいけないのか!


 反射的に俺も、半身を出し銃の引き金を引く。




 鉄火の轟音が、眩い閃光を弾きだし、不可思議な意識の浮遊感を体が襲う。


六乃ろくの、あんたこの公式間違ってるよ』


 机を挟んで向こう側の少女が、俺のノートに、ペンを指揮棒が如く躍らせる。


『うるさいな。別にいいだろ。間違っても宿題を提出しとけば先生も文句は言わないだろ?』


『みゃあ』


『ほらあ、ミィ太君も、ってさ!』


『違うよ。チールが欲しいんだろう』


 ミィ太は、俺の膝の上に乗り、体を丸める。


『チールは、もう無いの?』


 少女の問いに答えつつ、ミィ太の柔らかい顎を優しくマッサージする。


『ああ、餌はあるんだけど、この前ののときにチールは買い忘れちゃったからな』


『そっか、?』


『ん、俺はあとテキスト十ページくらいだけど』


じゃないよ』


 少女が深刻な眼差しでこちらを見つめ、自分のテキストを閉じる。


『このだよ』


 眼をそらし、彼女のテキストをみる。


 


 鋭く空を裂く発砲音が、俺を現実に戻す。


「絶対に、帰るからな――」


 彼女のテキストの名前の欄が反響する銃弾のように、俺の脳内を跳ねまわった。


「――京香!」


 ! まだ、俺の意思は帰るべき日常を欲するのだ!

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