第3話
「うわぁ、この空模様」
私は絶句した。
頭上を見上げると、黒い雲がモクモクと立ち込める。
今にも何か降ってきそう。
そう思った私はピコン! と予見した。
「槍が降って来るね」
そう呟くと、雷鳴が轟いた。
ゴロゴロガッシャーン!
理科の授業で使う実験器具が粉々になったような音が響くと、ズドン! と黒い棒が降って来た。
グサリ!
「やっぱり」
空から降って来たのは、長さはおそらく二メートル。
厚さは十センチを優に超えた槍だった。
しかも鉄製で危ない。
先端は雷の影響を受けて、帯電している。
ビリビリと電流を放つと、これからもっと酷くなりそう。
私はつい「チッ!」と舌打ちをした。
「なんとかしないと」
本当になんとかしないとヤバそう。
というより、ここ最近の空模様は荒れている。
もしかしなくても、龍のサボっているんだ。
もう、私は巫女とかそんなんじゃ無いのに。
ウザいなと本気で腹を立てると、一発文句を言ってやろう、実力行使でグーパンだ。
「そんなことより、早く虹を見つけて」
私は虹を連れて来ることにした。
虹さえ連れて来られれば、きっと如何にかなる?
淡すぎる期待を抱くと、突然声が上がる。
「危ない!」
ポンッ!
私は突き飛ばされた。
急に衝撃が走ると、私の体が飛ぶ。
地面に倒れ込むと、同時に私が立っていた場所から、ほんの数センチ隣に黒い鉄槍が降って来ていた。
「あ、危なかった。あの!」
一体誰に突き飛ばされた?
ふと顔を上げると、そこに居たのは先輩だった。
「ヤリガタケ先輩?」
「ふぅ。危なかったな、ニジカ」
そこに居たのは、三年生のヤリガタケ先輩。
髪の毛が少し尖っていて、槍のよう。
両腕と背筋が鍛え上げられていた。
「ヤリガタケ先輩、また降らせてるですか?」
マジで迷惑なんだけど。
私は腹を立てると、ムッとした顔をする。
皺を寄せると、眉がへの字になった。
「やめて貰えます?」
少し怒った口調だった。
空から槍が降って来たのは、ヤリガタケ先輩が原因。
「お、おいおい、いきなりなんだよ」
「私、虹を連れて来るから」
私はヤリガタケ先輩に腹を立てた。
ムッとした表情を浮かべると、すぐに避ける。
虹を連れて来ると宣言し、タッタッタッ! と、距離を取る。
「に、虹!?」
「うん」
「また龍を連れてくるのかよ?」
ヤリガタケ先輩は知っている。
龍の存在を知っている。
そう、蜃気楼ではなく、本物の虹の龍だ。
「あっ、ヤリガタケ先輩」
「ん?」
ピタッと立ち止まった。
振り返ってヤリガタケ先輩を見る。
名前を呼ばれると、少し緊張していた。
「降って来ます、槍」
「はっ?」
今から槍が降って来る。
これはヤリガタケ先輩のせいとか関係ない。
ゴロゴロと雷鳴が鳴ると、黒雲を貫き、黒鉄の槍が降った。
「うなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!」
絶叫を上げるヤリガタケ先輩。
丁度股の間に槍が突き刺さっている。
いや、危なかったですね。
「間一髪ですね。あっ、そうだ」
マジでギリギリだった。
危うく股間が本物の槍で貫かれる所。
本当に奇跡的な回避をみせると、凄いと思うよ。
「ヤリガタケ先輩、龍ってどっち行きました?」
まあ、それは置いておくとして。
私は龍がどっちに行ったのか、一応訊ねる。
顔色を覗き込むと、白目を剥いていた。
「あっ、ああ、あー、あっ」
「ん? ダメだ、気絶してる」
完全に気絶していた。
全く情報が無いし、これだとダメだ。
諦めてしまうと、私はトボトボ歩き出す。
「……?」
中庭の噴水。そこに小さな動物。
一匹の三毛猫が鎮座すると、私は声を掛ける。
「ネコ先」
この人の名前はネコ先生。
私達はネコ先と呼んでいる。
今はネコの姿をしているみたいだけど、欠伸をして背中を伸ばした。
「フニャー。ン ?」
「ネコ先。龍見ました?」
「ミタニャ」
「どっち行きました?」
「フン」
ちょっと辿々しい言葉遣い。
なんか面白い。でも聞き取りづらい。
私は耳に意識を集中させると、何とか聞き取った。
「あっちですか。ありがとうございます」
ネコに頭を下げる私。
全然不思議じゃないし、ここだと普通。
いやいや、普通だよ? さぁ、龍を探そうか。
次の更新予定
「明日は雨が降るかも」と言った私は、虹の龍を手懐ける。 水定ゆう @mizusadayou
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。「明日は雨が降るかも」と言った私は、虹の龍を手懐ける。の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます