第18章 総力プレゼン——国民を動かせ



 「希望の灯火作戦」が、始まった。


     ◆


 王国全土で、吟遊詩人たちが歌い始めた。


 酒場で、市場で、広場で——「守り手の歌」が、響き渡った。


 守りたい だから戦う  絶望知る者 希望を運ぶ  アルトの名 忘れるな  彼は我らの 守り手


 人々は、歌を聴いた。


 最初は、半信半疑だった。魔王軍が迫っている。もう終わりだ。——そう思っていた者も多かった。


 しかし、歌は——


 心に、染み込んでいった。


     ◆


 教会の鐘が、鳴り響いた。


 王都から、辺境の村まで。すべての教会で、同時に。


 ゴーン、ゴーン、ゴーン——


 その音は、「絶望の囁き」を打ち消すように、空に響いた。


 人々は、鐘の音を聴いた。


 「勇者が、戦っている」


 「希望を、捨てるな」


 その意味を、皆が知っていた。


     ◆


 そして——


 勇者パーティーが、動いた。


 アルトは、各地を回り、民衆と直接対話した。


「俺は……完璧な勇者じゃありません」


 アルトの声は、まだ震えていた。


 しかし、その声には——確かな意志があった。


「でも、俺は諦めません。皆さんのために、戦います」


 民衆は、アルトを見た。


 伝説の英雄ではない。ただの若者だ。


 でも——


 その目には、光があった。


 諦めない光が。


     ◆


 各地で、変化が起きた。


 脱走しようとしていた兵士が、戻ってきた。


 逃げ出そうとしていた農民が、踏みとどまった。


 諦めかけていた人々が——


 もう一度、立ち上がった。


「俺たちも、戦う」


「勇者だけに、任せてられない」


「みんなで、守ろう」


 声が、広がっていった。


 一人、また一人——


 希望の火が、灯っていった。


     ◆


 作戦開始から一週間後。


 クロートは、オフィスで報告を受けた。


「士気が——回復している?」


「はい」


 報告者は、ガルドだった。


「各地の駐屯地で、脱走者が激減しています。むしろ、志願兵が増えている」


「志願兵?」


「農民や、商人が——『俺も戦いたい』と申し出ているのです」


 クロートは、窓の外を見た。


 王都の街には、活気が戻りつつあった。


 「絶望の囁き」の影響は——


 薄れ始めていた。


「……効いている」


 クロートは、小さく呟いた。


「『希望の灯火作戦』が——効いている」


 しかし、まだ終わりではない。


 魔王軍は、刻一刻と迫ってきている。


 最終決戦は——


 すぐそこまで、来ていた。




第六部 最終決戦


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