第15章 チームビルディング——クリエイティブの力



 アルトの「覚醒」から一週間後。


 しかし、チーム内にはまだ問題が残っていた。


 アルト、セレナ、リゼット、ガルド——四人の間には、依然として溝があった。


 表面上は協力しているが、本当の信頼関係は築けていない。


 クロートは、それを感じ取っていた。


     ◆


 ある夜。


 野営中、クロートは四人を焚き火の前に集めた。


「話がある」


 四人が、クロートを見た。


「お前たち、本当の意味でチームになっていない」


 沈黙が、夜の森に落ちた。


 ガルドが、不機嫌そうに口を開いた。


「何を今さら。俺たちは、一緒に戦っている」


「戦っている。だが——信頼していない」


「……」


「俺は、お前たちのことを知った。過去も、動機も。だが——お前たち同士は、どうだ」


 四人が、顔を見合わせた。


 セレナが、肩をすくめた。


「まあ……正直、よく知らないわね。表面的には知ってるけど」


「リゼットも、ガルドも?」


「……はい」


 リゼットが、小さく頷いた。


「私は——人と深く関わるのが、苦手です」


「俺もだ」


 ガルドが、腕を組んだ。


「騎士団時代、仲間だと思っていた連中に裏切られた。それ以来、人を信じるのが——」


「だろうな」


 クロートは、頷いた。


「だから今夜、一つ提案がある」


「提案?」


「全員で、自分の話をしよう。過去のこと、今のこと、未来のこと。——何でもいい」


 四人が、顔を見合わせた。


「なぜ、そんなことを」


「チームになるためだ」


 クロートは、焚き火を見つめた。


「共に戦うなら、互いを知らなければならない。弱みも、恐れも、願いも——すべて」


「……」


「俺から始めよう」


     ◆


 クロートは、自分の過去を語った。


 前世のこと——広告代理店で働いていたこと。売るために嘘をついたこと。その結果、人を傷つけたこと。


「俺は——前の世界で、過ちを犯した」


 四人が、息を呑んだ。


「クライアントの欠陥商品を、知っていながら売り出した。結果、消費者が被害を受けた。——俺の責任だ」


「……」


「だから、今度は嘘をつかないと決めた。本当のことだけを伝える。——それが、俺の贖罪だ」


 沈黙が、長く続いた。


 やがて、アルトが口を開いた。


「俺も……話す」


 アルトは、自分の過去を改めて語った。


 飢饉のこと。家族を失ったこと。自分を責め続けてきたこと。


「俺は——ずっと、自分が許せなかった。助けられなかった自分が。でも——」


 アルトは、仲間たちを見回した。


「今は、少しだけ——前を向ける気がする。みんなのおかげで」


 セレナが、次に話した。


 孤児時代のこと。盗賊になったこと。子供たちを救いたかったこと。


「私は——ずっと、一人だった。誰も信じられなかった。でも——」


 セレナは、微笑んだ。


「あんたたちと一緒にいると、なんか——居心地がいいのよね。変な話だけど」


 リゼットが、小さく頷いた。


「私も——同じです」


 リゼットは、自分の過去を語った。


 迫害のこと。両親を殺されたこと。復讐を誓ったこと。


「でも——復讐しても、何も変わらない。それはわかっています」


 リゼットの紫色の瞳が、揺れた。


「今は——ここにいたい。この場所が——初めて、居場所だと思えるから」


 最後に、ガルドが話した。


 騎士団のこと。裏切られたこと。正義を信じられなくなったこと。


「俺は——空っぽだと思っていた。何も信じられない、何も守れない——」


 ガルドは、仲間たちを見た。


「だが——お前たちと一緒にいると、少しだけ——」


「少しだけ?」


「また、何かを信じてもいいかもしれないと——思えるようになってきた」


     ◆


 焚き火が、パチパチと音を立てた。


 四人は、互いを見つめ合った。


 言葉にしなくても、何かが——変わった。


「俺たちは」


 アルトが、静かに言った。


「最強のチームじゃない」


「そうだな」


 ガルドが、頷いた。


「でも」


 セレナが、笑った。


「最高のチームには——なれるかもね」


 リゼットが、珍しく微笑んだ。


「……悪くないです」


 クロートは、四人を見つめた。


(やっと——チームになった)


 これが、本当の「ブランド」だ。


 四人が、互いを信じ合っている。


 その絆こそが、民衆の心を動かす。


「さあ、明日も早い。寝よう」


 クロートが立ち上がると、四人も続いた。


 夜空には、満天の星が輝いていた。


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