面会

時刻:火曜日の午前十一時

場所:刑務所の面会室

人物:受刑者とその従兄弟


受刑者「俺が娑婆に出るときはじいさんだ。未来はない。ここで死ぬにしても、おれは天国には行けない。ああ、何でこんなことになってしまったんだろう」

従兄弟「おまえ自身ももちろん悪かったが、おまえのところのおやじとおふくろも悪かったとおれは思うよ。親が親として、ちゃんと世話を焼いていれば、おまえはこんなところにいなかったかもしれない」

受刑者「そうかい? そう言ってもらえると、すこしは心が落ち着く。ああ、それにしても、死んだらあの世とやらがあるのだろうか。天国と地獄。ああ、地獄には行きたくない」

従兄弟「……天国と地獄があるかどうはよくわらないが、もし、地獄なるものがあるのならば、おれたちがいま生きている、この世界こそ、地獄ではないかな。おれはそう思う」

受刑者「この世が地獄……。そんなこと、考えたことがなかった。でも、そうかもな。生まれてこの方のことを考えると、すんなりする。そうか、この世が、この世こそが地獄なんだ。そう思うと、何だか、心が和らいできたよ。ふしぎな話だが、何だか、生きていく気になった。ありがとう」

従兄弟「いいさ。また来るよ。じゃあな」

受刑者「ああ、ありがとう。さようなら」

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