Make-up Shadow
時刻:金曜日の午後九時
場所:居酒屋の化粧室(大学生の飲み会。男女三人づつ)
人物:鏡の前で化粧を整える女三人
左端の女がため息まじりに言った。「今日ははずれね」
真ん中の女が答えた。「そう? 私はひとり、いい人がいたわ。なんか、死生観が似ている感じがするの」
右端の女が応じた。「死生観? 妙なところにこだわるのね。さすが、哲学科」
真ん中の女が口紅を塗り終わってから言った。「あなたもそうじゃない。……私、格好がよくなくても、将来性がなくてもいいの。一緒にいて楽な人がいいわ」
すると、自分の髪をさわりながら、左端の女がつぶやいた。「死生観が同じでも、一緒にいて楽かどうかはわからないわよ。加速をつけて、ふたり一緒にずるずると、良からぬ方向にいくかもしれない。その果ては心中」
化粧を終えた真ん中の女が、左端の女の髪をもてあそびながら言った。「怖いことを言わないでよ。でも、死生観が似ている人はいても、死生観が同じ人なんて、この世にいるのかしら。私はいないと思うわ」
真ん中の女の言に、右端の女がひとつうなずいてから答えた。「たしかにそうね。みな、人はそれぞれちがう。死生観が同じ人なんて、いないわよ。同じに見えるのは、それは、宗教の見せる幻想ね」
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