ep.17

しまらない終わりをしたクランの顎をワシワシしながら、リンナとエスタの方を見る。


「そっちも人型のパートナーを連れてたんだな」

「か、隠してて悪かったとは思ってるわ。でも人型のパートナーなんてあまりいないもの……」

「り、リンナは悪くないんです! 不甲斐ない僕が悪いので……」

「別に責めてる訳じゃないんだが……」


パートナーが人によって異なるのは知っているが、人型になるとそんなに少ないのか。


「まぁ詳しく聞きたいわけじゃない。俺だって隠し札だらけだしな」

「そ、そうよ! なんなのよ、あの大岩は!!」

「こっちの札を見せたらそっちも見せないといけなくなるが?」


トランプをヒラヒラさせると、リンナは何も言えなかったようだ。

まぁそれはいいとして、だ。


「で、あのデカブツ相手にどう戦うつもりだったんだ? そのハンマーじゃ随分と分が悪そうだが」

「あ、あんなに大きいのは知らないわよ! というかあたしが昨日来た時はもっと小さかったもの!」

「小さかった?」


どういう事だ?

俺たちがここに来た時は既にあの大きさだったのに?


「んー……答え合わせ、いる?」

「……そのポーズでいいのか?」

「気持ちいいし〜」


ずっと顎を撫で続けられているクランがウットリとした顔でそう言ってくる。

リルナとレルナは……あー、クランの足を引っ張って引き剥がそうとするのをやめなさい。


「さて、と! 充電も終わったし、クラン先生による授業を始めよう!」

「頼んだぞ」

「さてさて、ではまずあのヒュージスライムだけど……多分リベットが原因だね」

「俺?」

「そう。なぜだか知らないけど、異界人の冒険者は人によってボスモンスターの強さが異なる。ボクも詳しく調べた訳じゃないから恐らくとしか言えないけど、倒したボスモンスターの数によって変わるんじゃないかな?」


プロテージャーはミウロゥが倒したが、パーティーメンバーとして加算されたんだろうか?


「で、次の街に行くために必ずボスモンスターを倒さないといけない。それがあのヒュージスライムだね。ちなみにあんなに大きい理由は分からないよ」

「あたし達はサンフ前で沼カエル、クレプス前はゴースト、王都前で大きな草原鶏だったわね」

「そうだね。この次の街がツワイトでそのボスモンスターがスライムなんだけど……」


エスタの視線がヒュージスライムへと向かう。


「ちなみにリベットはプロテージャー……というよりコックベアーを倒しただけだね!」

「あのクマそんな名前だったのか……」

「そう! だから爪でガリガリしてたでしょ? あれ、料理の真似らしいよ」


俺はまな板の上に置かれた肉だったのかよ……


「と、いうことで! 本来ならあのスライムはもっと小さくてそれなりに硬いらしいんだけど、ここにいるリベットくんのせいであんなに大きなヒュージスライムになったのでした!」

「いやまぁ……俺のせいなのか?」


巻き込まれた方なんだが……


「そういうことだったのね……」

「あー、まぁ悪いな。アレを俺たちが先に倒してその後で通常のを倒したらいい。申し訳ないけどな」

「ううん。それよりも、あたしにもアレ倒すの手伝わせてよ!」

「リンナ!?」

「いいじゃない。あんなに大きくてブヨブヨしてるスライムなんて早々お目にかかれないわよ? まぁ潰しにくそうではあるけど……」


確かにハンマーの通りは悪そうだ。

トランプの兵士も相性悪そうだし……うーん……


「……その手はなんだ、クラン?」

「へへ、このボクが一肌脱いじゃおうかなって」

「手を出した理由は」

「特にないかな! 強いて言うならご褒美の前払いが欲しいな!」


そんなこと言うからついに2人が足を蹴り出したぞ。

ダメージは特になさそうだが。


「……ちなみにあれを相手するならどうすればいいんだ?」

「うーん……植物魔法、覚えたでしょ。それを使うくらいかなー」

「なんで分かった……いや、さっきのでか」

「まぁね。まぁまさかあの花を使うとは思わなかったけど」


まぁ面白そうなものを、って考えながらノートを開いたら植物魔法を覚えたんだがな。

で、手持ちの植物……というか花と言えばあの2つになったわけだ。

恐らく満月花は使用者にバフを、新月花は相手にデバフを、それぞれ与える感じだろう。


「植物魔法か……そこら辺に生えている雑草でも試してみるか?」

「モノは試し、ということでレッツゴー!」


指を鳴らすとリンナとエスタのロープが解け、2人は自由となった。

さて……近くに生えていた雑草を抜いたはいいけどこれでどうなるのかね?

というかいつの間にかまた新しい項目が増えてるな?

スキル一覧か。


【スキル一覧】

・植物魔法[レベル2]

〖詠唱することで、植物が持っている能力を使えたり、種を花や木に成長させたりすることができる〗


〘種よ、生長しろ〙new

〘咲き誇れ【花の名前】〙


・前を向いて[常時発動]

〖決して諦めることなく前を向いて進むあなたに勇気の加護を〗


どうやらさっきのでレベルが上がったみたいだな。

種を成長か……

雑草は1度カバンにしまっておこう。

いつか使えるかもしれんしな。


「クラン、種持ってないか?」

「ん」

「……これでいいか?」


両手で頭をワシワシと少し強めに撫でる。

なんか……あれだな。

子どもの時に飼ってた犬みたいだな。


「ヌへへへ……ではお出ししましょう! こちらをどうぞ」

「随分とデカ……いや、デカすぎるだろ!」


人の顔と同じサイズの種って!


「いやいや、あんなデカイスライムにそこら辺の小さい種なんかじゃ太刀打ちできないって。これでいいのだ!」

「ホントかよ……ちなみになんの種なんだ?」

「そこはひ・み・つ♡」


最後の言葉で蹴りの強さが更に上がったが、俺は止めないからな?


「んじゃ行くか。ミウロゥ、スマンが2人を見ていてくれ」

『ん』


クランをゲシゲシ蹴っている2人の傍にスッと立つミウロゥ。

いつか礼をしないとな。


「さてと。待たせたな」

「スライムはコアが中にあるのよ。それをぶっ壊せばあたし達の勝利よ!」

「怪我の回復は僕がしますので」


実質初めてのボス戦だ。

気を引き締めて行くとするか。


「リンナ、このデカイ種をあのスライムの中に打ち込めるか?」

「できないことはないと思うけど……どうなるの?」

「さぁ?」


それは俺にもわからん。

とりあえず種を地面に置く。

ゆっくりと手を離したが、倒れる気配は無い。


「さぁ? って……何も起こらなかったらどうするのよ!」

「確実に何かは起こる。それが何かはわからんってだけだ」

「……分かったわ。とりあえずコレをあのデカイスライムの中にぶち込めばいいのね」


そういってリンナはハンマーを水平に構える。


「ぶっっっっっとべ!! 『豪打砲』!!!」


ごうだほう。

恐らくそれがスキルなんだろう。

水平に構えたハンマーをそのまま振り抜き、種は少し斜め上を向いてスライムへと一直線に飛んで行った。

スライムの中に種が入り込むと勢いは完全に死んだが、


「それでいい。『種よ、生長しろ』」


動作の指定は特になかったが……とりあえず種に向かって指を指しておく。

変化は……無さそうだな?

スライムも特に動かなさそうだし……


「ちょっと、ホントにこれでいいのよね?」

「いいはずだ……多分」

「多分って!?」


リンナに詰め寄られたその時、ポンッと音が聞こえた。


「ふ、2人とも! スライムの天辺に花が!」

「花ぁ? そんなの咲いて……咲いてる!?」

「あれは……ラフレシアか?」


図鑑で見た覚えがある。

確か……とんでもなく臭いんじゃなかったか?

だが臭いはしないな。

というか花が咲くだけで何も……


「少し萎んでないか?」

「花が? さっきより元気になってるわよ?」

「いや、スライムが」


さっきまで木と同じくらいのサイズだったのが、どんどん萎んでいっている。

スライムが萎んでいくのに対して花は更に元気になっていく。

それと同時に根っこらしいものが増えてきたな。

根っこ?


「なるほど、あの花がスライムを吸収しているのか」

「だ、大丈夫なの……急に襲ってきたりしないわよね……?」

「大丈夫だ」


多分おそらくきっと。

なんて思っているうちにどんどんスライムは萎んでいき……


「これがコアか」

「根っこで雁字搦めになってるけどね……」


最後には成人男性の頭ぐらいのサイズの石だけとなった。

まぁ、その石に根っこが全体を覆うように張っているんだが……

肝心の花はそれはそれは見事な薔薇みたいになっていた。

最初のラフレシア要素はどこいったんだよ。


「ね、ねぇ……あの花襲ってこないわよね……?」

「動く様子もないしなぁ。多分大丈夫だろう」


何かあっても頼りになる2人がいるし、そこは安心してもいいはず。


「とりあえずその石を叩いてみてくれよ」

「……分かったわ」


リンナがスライムのコアに近づくと、ハンマーを思いっきり振りかぶり、


「ぶっ潰れなさい!! 『粉骨砕身打』!!!」


辺り一面に粉が舞い上がる。

とんでもねぇな……


「ふぃー……スッキリ!」

「お疲れさん」


声をかけると急に影ができた。

ふと上を見上げると、花がこっち向かって倒れてきていた。


「危ねぇ!」

「え」


リンナに向かって跳んだところで、横からエスタが影の外から飛び込んでリンナと一緒に影の外へ滑って行った。

あー、つまり?


「まぁそのためにボクたちがいるわけで」

『怪我は無い?』


気づけばミウロゥに右肩を、クランに左肩を掴まれて、影の外にいた。

花がゆっくりと倒れていくのを見ながら、


「助かったよ、2人とも。ありがとな」

『なんてことはない』

「大丈夫だよ。リベットには怪我一つさせないから!」


ならこれからも頼りにさせてもらおう。

……自分で出来ることは自分でやるつもりだが。


「にしてもデカイ花だな」

「そうでしょ〜? 偶然見つけたんだけど、その時もとんでもない大きさだったなぁ」


地面に下ろしてもらいながら、クランがそう言う。

偶然……ねぇ。


「さてさて、頑張ったリベットくんにはご褒美をあげましょう!」

「これは……図鑑?」

「そう! リベットがこれまでに出会ったモンスターや植物、つまりアレとかだね! そういったものが自動で書き込まれる図鑑だよ! 自分で見ないといけないのが難点だけど」


【図鑑】

〘出会ったモンスターや植物などを自動記載する図鑑。人や建物は対象外であり、自分自身の目で直接みたものだけを記載する〙


ほー……話を聞いただけじゃダメって訳だ。

旅をする中で色々見るだろうし、楽しみがまた増えたな。

とりあえず中を見てみるか。


【ヒュージスライム】

〘突然変異により巨大化したスライム。動きは大変鈍く、反撃もしない。弱点は体内に生成されるコア〙


【パラサルフラワー】

〘生物に寄生し、体内の水分を養分として花を咲かせる。咲いた花から種が自然に排出され、鳥に運ばれ落とされるか種を食べない限り寄生できない。太古の時代に海を枯らしたという伝説が残っている


心を奪われたのであなたを決して離さない〙


……あの花、そんなにヤベェやつだったのか……


「なぁクラン……なにしてんだ?」

「種を採取してるだけだけど?」

「……ヤベェ花なのに?」

「ヤベェ花だからさ」


花の中心に手をズボッと突っ込んで……うわぁ……肩の根元近くまで入ったぞ……

引っこ抜いた時に持っていたのは渡された時と同じサイズの種。


「ちなみにこれ、鳥とかが運んだりするんだけど、高いところから地面に落としただけでアウトだからね?」

「図鑑に書いてあったな」

「地面に落ちた場合ね、辺り一面が花畑になるんだけど、そこに入った生物はもれなく寄生されるから。だから禁忌の種って言われてて、許可がないと持ち運べないの」

「……俺、大丈夫か?」

「ボクがいるからね! それに放置してたら誰かが取っちゃうかもだし、1度種を引っこ抜いたらあとは枯れるだけだから」


片手で種を持ちながらそう言うクラン。

いや、よく持てるな……

なんて思っている内に花は萎んでいき、ついには塵となって消えていった。


「これにておしまい! おつかれ、リベット!」

「俺はほとんど何もしてなかったと思うけどな」


種がなかったらもっと苦戦してただろうし、クランがいなければどうなっていたことか。


「ありがとな、クラン」

「どうしたのさ、いきなり」

「いや、お前がいなければここを突破することも出来なかっただろうし、今後もどうなるか分からなかったからな」

「き、急なデレ……これが愛ってやつだね!」


それは違うと思うが……


「ボスも倒したことだし、出発するか。リンナとエスタはどうする? ツワイトまで送るが?」

「ううん、あたし達は王都に1度戻ろうと思うの」

「そりゃまたなんでだ?」

「ツワイト方面以外にもルートはあるし、1度リニダーまで戻って他の街に行ってもいいし……まぁ、とにかく修行よ!」


まぁ本人たちがそう希望してるならそれでいいんだろう。


「そうか。頑張れよ」

「もちろんよ! 絶対にいつかあんたらに勝ってやるんだから!」

「なら俺ももっと強くならないとな」


植物魔法も色々使えそうな予感はしてるし。


「ふふん! その時にはあんたなんてコテンパンにぶっ飛ばしてあげるんだから! 行くわよ、エスタ!」

「ちょ、待ってよ! リンナー!」


猛ダッシュで王都へ走っていくリンナと追いかけていくエスタ。

まぁあれはあれでいい関係なんだろう。


「さて、俺達も行くか」


次の街はツワイト。

何が待ってるのやら。

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2026年1月12日 12:00
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仮想現実の世界で、自由な旅を からくり @karakuri1347

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