ep.16

リベットとリンと呼ばれた女の子が対峙する。

彼らのパーティーメンバー以外に人はおらず、彼らだけが馬車の近くで待機していた。


3人は心配そうな顔を、1人は心底どうでもいい顔を、1人は真剣な眼差しを、彼らに向けていた。


「あたしはリンナ! 新米冒険者で傭兵を目指しているわ!」

「俺はリベット。このフリヘイトの世界を自由に旅する旅人だ」


リンナは背負っていたハンマーを掴むとクルクルと両手で振り回すと、柄の部分をドンッと地面に置いた。


「あたしはこのハンマーで色んなものを叩き壊してきた。これまでも、そしてこれからも! リベット、アンタみたいな強そうな奴もよ!」

「だから俺は弱いと言っているだろう……」


リベットがそう言うも、


「問答無用! ぶっ潰れなさい!!」


リンナは斜めに飛び上がり、リベットの真上からハンマーを振り下ろす。

潰れる未来を想像したのか、観客のうち2人は目を手で覆ってしまった。


『よーくみなさい。アレがリベットの力だよ』


だが、ミウロゥがそう言うと、恐る恐る手を下ろす2人。

彼女達の視界に入ってきたのは、


「いっっっっ!?」

「助かったよ、クローバー」


ハンマーは巨大な岩に当たったようだが、ヒビすら入っていなかった。

その大岩に隠れるようにして、リベットとクワを持った農兵が立っていた。


「こ、こんのっ! 騙したわね!」

「パートナーが誰かなんて一言も言っていなかったが?」

「それはそれ、これはこれよ! なんなのよ、この大岩は!」


大岩の上で地団駄を踏むリンナに対して、リベットは懐からノートを取り出し、大岩から離れていった。


「ちょっ、どこに行くのよ! まだ勝負は終わってないわ!」

「……そうだな。確かに終わっていない」


リベットの言葉が言い終わるちょうどその時大岩はスーッと消えていった。

上で地団駄を踏んでいたリンナは当然尻もちを着く羽目に。

「あいたっ! ちょっと! 消えるなら消えるって言いなさいよ!」

「悪いな。俺も知らなかったんだ」


尻もちを着いているリンナの前には2輪の花を手にしているリベットが立っていた。


「花? 今更あたしにプレゼント?」

「違うさ。これはこう使うんだよ」


それぞれの手に光る花と真っ黒の花を持ち、


「『華麗に咲け、満月と新月の花よ』その力、少しの間俺に貸してくれ!」


そう叫ぶ。

手に持った花が、黄色に、黒色に、それぞれ光り出す。

光が収まり、花の代わりにそこにいたのは小さな女の子達。

彼女たちはふわりと浮かび上がると、互いに手を取り合い、手を握りしめ、互いの額を軽く当て、目を閉じる。


リベットには薄い黄色のオーラが、リンナには黒色のオーラが、それぞれ現れる。


「な、なによこれ……から、だが……おも、い?」

「凄いな。身体が随分と軽い」


リベットがその場で軽くジャンプすると、数メートルほど飛び上がる。


「さて、と」


トランプの束を手にリンナの前に立つ。

自身にかけられた謎のオーラの正体も分からぬままリンナは顔を上げることしかできない。


「俺には武器がない。なので、これで勝負を決めよう。コイツは俺のパートナーでな。でた絵柄によっては……まぁ、そう痛くないだろうさ」

「う、ウソよ……絶対痛いに決まってるわ……」

「かもな。だが、悪いな。吹っかけられた勝負を自分から降参するほど俺もお人好しじゃないんでな」


リベットがカードを1枚捲ろうとしたその時、


「……へぇ?」

「エスタ!!」

「リンナには手を出させません。確かにリンナから言い出した勝負です。ですが、パーティーメンバーの1人として……いえ、彼女のパートナーとして、僕は彼女を護る!」


持っていた杖を構え、リベットと対峙する男、エスタ。

それを見たリベットは頷くと、


「そうか、そうか。1人で戦う約束はどうする?」

「卑怯だと言われようとなんだろうと構いません。僕はリンナを護るためなら卑怯にだってなってやる」

「……」


その言葉にリベットはトランプを懐に戻すと、クルリと彼らに背を向けた。


「に、逃げるんですか!?」

「逃げる? 違うとも。リルナ、レルナ! あとは2人に任せたぞ!」

「「かしこまりました、お父様」」


リベットと入れ替わるように2人はその場に現れた。

レルナは右手にステッキを、左手はリルナの右手を。

リルナは左手にステッキを、右手はレルナの左手を。

それぞれ握りながら、一礼する。


「初めまして。私たちはお父様の忠実なる僕にして、娘です」

「初めまして。私たちはお父様の忠実なる僕にして、兵士です」

「「我らが主の命により、私たちのお父様のお言葉により、これよりあなた達には素敵で愉快なショーをお見せしましょう」」


2人が再び顔を上げると、そこにはニヤリと笑う赤い半月が浮かんでいた。


「……え」


勝負はまさに一瞬でついた。

リルナとレルナの姿が消えたその瞬間にはリンナとエスタ、それぞれの背中にステッキが突きつけられていたからだ。


「これにて」

「チェックメイト」

「「お遊戯の時間は終わりなのです」」


2人の背中にステッキを突きつけながらリルナとレルナは宣言する。

なんとか足掻こうとするリンナだったが、体は未だに重く、まともに動かせない。


「で、2人とも。そこからどう終わるのかな?」

「……そ、それは今から考えるのです」

「リルナ! それは言っちゃダメなのです!」


問いかけたクランはそれを聞いてため息を着くと、


「仕方ないな〜。だから詰めが甘いんだよ?」


指を1度鳴らした。

途端ロープで縛られるリンナとエスタ。


「これが本当のチェックメイト、さ。と、いうことで、リベット〜。ボク頑張ったよね? ね? ご褒美ちょうだ〜い!」

「しまらねぇなぁ」

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