ep.15
ヘッドギアを手に持ち少し考える。
娘……か。
結婚も1度は考えたことがあった。
あの親を見て自分もそうなってみたいものだ、と。
まぁ結果として1人なんだが。
ベッドから降りて水を飲みに行く。
妹達も弟も結婚して幸せそうにしている。
が、どうにも想像がつかない。
最もその前に娘ができた訳だが……
まぁ、今はそれでいい。
いつかそのうちにな。
再びヘッドギアを被り仮想現実の世界へ。
自由に旅をしたい。
今はそれでいい。
「……で、起きたらなんでこうなってるんだ?」
『おはよう、リベット。ちょうど朝を迎えたところだよ』
目を開けると馬車の中。
ガタガタ揺れているから移動中なのだろう。
そこまでは覚えている通りだ。
顔を下に向けると、リルナとレルナがそれぞれ太ももの上に頭を乗せて寝ている。
うん、なんでだ?
『まぁ色々とね』
「色々か……」
後で聞くとして、今は貰ったものを確認しようか。
【スキルの書】
〖何も書いていないノート。自分が使いたい魔法を思い浮かべて開くことで新たなスキルを入手する〗
【植物の種】
〖どんな種なのか、どこから運ばれてきたのかさっぱり不明な種。植木鉢に植えることで育つ〗
スキルの書はまだいいとして、種はなんなんだ?
とりあえず植木鉢を水晶玉から取り出して……うん、植えてみるか。
「……これでいいのか?」
『いいと思うよ。あとは転けないようにちょっと固定しておこうか』
そういって腰のポーチからロープを取り出すミウロゥ。
何でも入ってんな、そのポーチ……
とりあえず俺は動けないし植木鉢をソッとミウロゥに渡す。
邪魔にならないよう出入口の端っこに置き、ロープで固定する。
……何かこう、もうちょっと陽の当たるように考えた方がいいかね……
「ぅん……おはよーございます……ぱぱ……」
「んにゃ……おはよーなのです……おとーさん……」
……聞き間違いか?
「おはよう、2人とも。いい夢は見られたか?」
「ハッ! い、いつの間に……も、申し訳ありませんお父様!」
「ほ、本当なのです! 申し訳ありませんお父様! お父様の膝を濡らしてしまったのです!」
「あー……いいよ。すぐに乾くだろうし」
そういうこともあろうさ。
落ち込んでいる2人の頭を撫でて慰める。
にしても、いつの間にシルクハットを取ったんだ?
2人の頭を撫で終わる頃に
「イチャイチャしてるところ悪いけど、モンスターだよ! それも大型の!」
と、御者をしているクランから声がかかり、馬車が止まった。
幌馬車から3人を順におろし、どんなモンスターなのか見に行くと、
「デカイ……スライムか?」
「あれはヒュージスライムだね。でもあんなに大きなの聞いたことがないけど……」
道のど真ん中に居座って通せんぼうをするようにでかいスライムはそこにいた。
大きさは……プロテージャーと同じくらいか?
トランプの兵士だと厳しそうだな。少なくともあんなにブヨブヨでは剣が通るとは思わんし……
「ほらー! もう誰か来ちゃってるじゃない! どうすんのよ!」
「リンが食べ足りないって言ったからじゃないかな?」
「なんですって!?」
スライムを見上げていると後ろからそんな声が聞こえてきた。
プレイヤーか?
「ぼ、僕達あのボスに挑むんですけど……お先にやります?」
「いや、どうしたもんか考えていたところだ。先を譲るさ」
「あたし達の戦い方を真似するんじゃあないでしょうね?」
男と女の子、2人だけのパーティーか。
男は僧侶っぽい服装で、女の子は……これまた随分とでかいハンマーを持ってるな。
女の子の身長と同じくらいじゃないか?
「それならこの馬車の中で待ってるさ。それならいいだろ?」
「ふーん……王都を出たばかりでもう馬車を持ってるなんて……アンタ商人なの?」
「旅人だよ。この世界を自由に旅したくてね」
見た目で判断するしかないが、恐らく年下、それも学生だろう。
2人だけのパーティーは果たして珍しいんだろうか?
「まっ、それならいいわ。ところでアンタもプレイヤーよね? 見たところあたしと同じ人族かしら?」
「そうだ。リニダーの街からだろ?」
「そうよ。と言ってもあたしはリニダーからサンフ、クレプス経由で王都なのだけれどね。アンタは?」
「……月光の森だ」
絶対正規ルートじゃないよな?
明らか他にルートあるじゃねぇか。
「月光の森……?」
「げ、月光の森から!? 危険すぎますよ!」
「随分と遅い忠告をどうも」
2人で反応の差が随分激しいが、男はそれなりに情報を仕入れている感じか。
「どう危険なのよ」
「あそこは冒険者ギルドのマスターから許可が降りないとまず入れないし、そのためには冒険者ランクを最低でも銀にする必要もあるし、そもそも森に入ってもモンスターがとんでもなく強いから少なくとも6人でパーティーは組まないと一瞬でやられちゃうんだよ!」
へぇーそうだったのか。
道理であのクマ、俺を前に舌なめずりしてた訳だ。
「……ということはその森から来たアンタはそれなりに強いのね?」
「俺は強くないが……ウチのがかなり強くてな」
目の前の女の子と話し始めたくらいから馬車の方で固まっていたミウロゥ達をチラと見る。
「へぇ……ならここであたしと勝負しない?」
「勝負? あのヒュージスライムを倒さなくていいのか?」
「そんなのは、あとあと。今はあんたみたいな強そうな人と、それもあたしと同じプレイヤーと戦いたいのよ」
「……なんとかしろよ」
「ご、ごめんなさい……リンは言ったら聞かなくて……」
大丈夫なのか、この2人……
「言っただろう。俺は強くないって」
「パートナー、いるでしょ? 多分あの4人のうちの誰かよね? 一緒に戦ってもいいわ。アンタ武器持って無さそうだし、2人がかりでどうぞ?」
「……それなら」
考えていたことを試す時が来たかもしれない。
「リルナ、レルナ、クラン! 手を出すなよ?」
「へーい」
「「お、お父様!?」」
軽いノリで返事をしたクランと心配そうに声を上げるリルナとレルナ。
クランは多分分かってるんだろう。
「あら、いいの? せっかくのチャンスだったのに」
「結構。俺にはまだまだ手札があるもんでな」
初の戦闘、それも対人戦だ。
ぶっつけ本番になったのは少し誤算だったが……何とかなるだろうさ。
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