ep.8

「それで、2人はなんでカードにならないんだ?」

「はい、お父様。私たちはジョーカーでトリックスターで奇術師でマジシャンなのです」

「ですので、お父様。私たちはトランプの兵士たちとは違って独立した存在なのです」


ほー……よく分からなかったが、もう一度ジョーカーのカード説明を見てみるか。


【ジョーカー】

〘独立したトランプの兵士。トランプの兵士が一定時間でカードになるのに対して、ジョーカーには時間制限がない。代わりに固有のHPを有しており、HPが0になるとカードとなる。再出現には1日かかる。


ですので、お父様。どうか私たちから目を離さないでくださいね?〙


文章が随分と変わって分かりやすくはなったな。

個として存在……したからなのか?

……最後は見なかったことにしよう。


「それよりもお父様。このような森で何をなさるおつもりなのですか?」

「そうです、お父様。昼間はピクニックにいいかもしれませんが、もう夜でございます」

「「早くベッドで一緒に寝ないといけません」」


グイグイと引っ張る2人。

いや、どこで寝るつもりなんだよ。


『目的ならあるよ。ほら、丁度今咲き始めたところだ』


ミウロゥが指さす方を見ると、金色に光る花が円を描くように咲いていた。

そう言えば上から見た時に丁度こんな感じで円が広がっていたな。


「あの満月花を取りに来たんだよ」

「流石はお父様。このような至極面倒で護りの獣を倒さねば採取不可の満月花を取りに来るとは」

「素晴らしいです、お父様。満月の夜まで待たないといけない花のために夜遅くまで起きるとは」

「「偉大なるお父様に敬服致します」」


ちょっと面白くなってきたけど、流石になぁ。


「とりあえずお父様は辞めようか」

「「かしこまりました、お父様」」


ホントに分かってる?


『それはいいけど、はいコレ』

「これが満月花……」


【満月花】

〘月光の森・中央にて満月の夜限定で採取可能。月の光が花となって現れる。特効薬の素材になる。


光り輝く私からアナタへ贈る愛の印〙


最後はいいとして、この黄色にすげぇ光ってるのが満月花か。

……眩しいな。

「私たちもお父様へプレゼントします」

「こちらをどうぞ、お父様」

「「私たちからお父様へ愛のプレゼントです」」

「あ、ありがと……根っこから取って大丈夫なのか?」

『問題ないよ。そのまま鉢植えで育てられるし』


というか片方真っ黒なんだが?


【新月花】

〘月光の森・中央にて新月の夜限定で採取可能。光無き光が花となって現れる。採取は非常に困難。


暗闇の中でもあなたに届いてほしいこの想い〙


違う花を貰ってしまった……


「ありがとう。大切にするよ」

「いえいえ、お父様。これは序の口にすぎません」

「いずれはこの世界……いえ、宇宙の全てをお父様へプレゼントしますので」

「「支配者となったお父様……素晴らしい限りです」」

「うーん、いらないなぁ」


なんというか子どもが甘えてきてるって思えば楽しいもんだな。

当の本人達はガックリしてるけど。


「貰ったはいいけど、鞄ないんだよな……」

『ならあそこにいいものがあるよ』


そう言って指さす方には倒れているプロテージャー。

まさか……


『解体ナイフ、買っておいてよかったね』


ミウロゥが指示してくる順に解体ナイフでバラしていく。

中々切れなかったりするところはリルナとレルナが後ろから引っ張ってなんとか切り落としていく。


「初めての出番がこれとかお前も散々だな」


血塗れになった解体ナイフについ話しかけてしまう。とりあえずなんとかプロテージャーを解体し終えた。

正直歪だけど、とりあえず王都で鞄買うまでの繋ぎだと割り切った。


紐はミウロゥの不思議なポーチから出てきたが……


『さぁこれで入れ物はできた。ということで私からもキミに』

「いいのか? これ特効薬の素材なんだろ?」

『いいのいいの。どうせこれだけ咲いてるのに朝日が昇ったら全部枯れちゃうんだし』


満月の夜限定で咲く花だから、か。

そういう場所が他にもありそうだな。


『ということでジャンジャン入れちゃおうね』

「リルナ、負けてられません。私たちもお父様へより多くのプレゼントを」

「レルナ、負けてられません。私たちもお父様により多くお渡ししましょう」

「「私たちの愛は誰にも負けないことを証明するのです」」


競走するんじゃ、あ、あぁ……綺麗な花畑が一瞬で更地に変わってしまった……

というか全部根っこ付きって。


『ふぅ、満足。さて夜の間にさっさと王都を目指そう。満月花から特効薬にするのに時間かかるし』

「と、いうことは?」

『今度は大丈夫。ちょっと走っていけば辿り着けるし』


と言ってたのは嘘だ。

ちょっとじゃないだろ!

めちゃくちゃ全力疾走じゃねぇか!


『頑張れー、リベットー』

「め、めちゃくちゃ、よ、余裕、あるじゃねぇか!」


い、息が!


「レルナ、やはり我々がお父様をお運びするべきでは?」

「リルナ、それはいい案です。お父様は私たちがお連れするべきです」

「「お父様、失礼します」」

「お、おい!?」


空中を浮いて着いてきた2人が急に俺の腕を掴む。


「お、おー? これは楽だ。ありがとな2人とも」


手をそれぞれの頭に……シルクハットが邪魔だな?

顎らしき場所に手が届いたからそこを撫でる。


「く、くすぐったいです、お父様」

「で、ですが気持ちいいです、お父様」

「「これが私たちに贈るお父様の愛情ですね」」

「お、おう、そりゃよかったな?」

『……リベット。後で私にも要求するから』

「お前は嘘ついただろ」


そう言うとプイッと前を向いてしまった。

なんなんだ一体……


森を抜ければ夜にも関わらず大きな城が見えた。


『あれが王城。この国を治める王様が玉座でふんぞり返ってる所』

「言い方よ。にしてもあれがねぇ」


なんというか……


「ただデカいだけだな……」

「ならばお父様、私たちがもう少し低くしてきましょう」

「地面と同じ高さにしてしまいますね、お父様」

「「お父様が望まれるなら今すぐにでも」」

「迷惑になるからやめなさい」


そこ、それがいいと頷くな。


暫く揺られていると小屋が見えてきた。

近づくと兵士っぽい人が槍の持ち手を地面に突いて通行止めのように俺たちの前に立つ。


「止まれ! これより先は王都。冒険者の証を持っていなければ入ることはできない!」

『リベット、出してね』

「お、おお。とりあえず2人とも降ろしてくれ」


えーと確か


【プロテージャーでできた鞄】

・護符

・戦術ノート

・アダマンタイトの棍棒

・水晶玉

・思い出のエンブレム

・冒険者の証

・解体ナイフ

・研磨剤

・プロテージャーの肉

・プロテージャーの皮

・プロテージャーの熊掌

・プロテージャーの頭

・満月花

・新月花


鞄を直接ガソゴソ探して……お、あったあった。

にしても……頭は要らないと思うんだ……


「これでいいか?」

「ふむ……駆け出しか……依頼は……受けていない? 随分とおかしな奴だな? 盗んだのか?」

「貰ってから真っ直ぐここに来たからなぁ……あと盗んではいない」


文句ならリニダーの街にいるギルドマスターに言ってくれ。

というか冒険者の証からそういうの見られるんだ?


「お父様、この無礼な男を処しましょうか?」

「お父様、この礼儀を知らない男を処しましょか?」

「「私たちのお父様に対しての無礼、死を持って償いなさい」」

「やめなさい、これもこの人の仕事だから」


物騒なことを言わないでくれ。


『彼らなら私が保証する。必要なら王様に伝えてくれてもいい』

「そういう貴様は?」


ミウロゥ、胸を張ってカードを見せてるところ悪いが多分見えてないぞ。

周りは暗いし、カードは黒だし。


「問題ない、ワシが依頼を出しておいたのだ」

「あ、貴方様は!!」


王都の中からでてきたのは……じいさん?


『おじいちゃんじゃん、久しぶり』

「声が出せると聞いてはいたが本当じゃったとはな」


どうやら顔見知りのようだ。

ついでに俺も助けて欲しい。

この2人止めるのちょっと大変なんだが?


『リベット、こちら治療院の院長をやってるメニーリア先生』

「メニーリアだ。あと治療院は最近病院という名前に変わったぞ?」

『嘘……いつのまに……』


この院長先生が満月花の採取を依頼した人っぽいな?


「初めまして、リベットです。ミウロゥとは……あー、旅の仲間?」

『どうしてそこで疑問を覚えたの? ねぇ?』

「ホッホッホッ、随分と仲が良さそうではないか。それよりもお主、例の花は?」

「ここに」


鞄から取り出した途端眩しくなる。

目が痛い。


「うむ、確かに満月花じゃ。」

「あの……眩しいんでしまっても?」

「おお、構わんとも。さて4人とも病院まで案内しよう。すぐそこじゃ」


そう言ってメニーリア先生は歩き始めたので、俺達も後に続く。

途中兵士に2人がガルルと威嚇していたが何とか押さえておく。


【王都】

〘国の中心に存在する都市。中央に王城があり、それを囲むように家々が建ち並んでいる


華やかな裏には決して見えない闇が潜んでいることを忘れるな〙


小屋から歩いて数分で大変立派な建物が見えてきた。

そこらにある家よりデカイな。


「ここじゃ。それじゃ中に入ろうかの」

「お、おお……デカイな……」

「王都じゃからなぁ、それなりに怪我人も病人もでるというもの。教会で任せられる分は任せるがそうもいかんからのう」


メニーリア先生の後ろにつきながら周りを見渡す。

部屋がかなり多いな。


「怪我人は減ったが、最近は病人の方が多くてな」

「そのために満月花を?」

「それもある。特効薬の価値がココ最近随分と高くなってな。手持ちも尽きた所故依頼を出したところじゃ」

『あんなに咲いてたのにね』


それを更地にしたのは君たちだがな?


「ワシが直接行ってもいいのじゃが、ここを離れられん。精々小屋までが限界じゃな」

「医者が少ないのですか?」

「回復魔法を使うだけなら教会に沢山おる。じゃがな、病気となるとそうはいかん。心のヤマイというのもあるし、体内に入り込むものもある。そういうのをワシら医者が何とかするのじゃ」


時々看護師っぽい人や医者っぽい人とすれ違う。

院長先生とすれ違う度に全員頭下げているの初めて見たな……


「着いたぞ。一先ずここで満月花を貰おうか」


中に入ると、湿布っぽい匂いが酷かった。

ツンっとくるような匂いが……


「ここで薬を作っておるのでな」

「それで……」


とりあえず満月花を取り出し机の上に置く。

まだ光ってるのか……


「うむうむ、確かに頂戴した。報酬はヘクサに渡しておるでな、あヤツから受け取るといい。明日こちらに来ると言っておったからの」

『ん、それじゃ今日は夜遅いし、宿屋でも探そうか』

「まぁ待ちなさい。この時間に宿屋探しはきつかろう。この部屋から数えて3つから先は空き部屋となっておる。好きな部屋を使いなさい」

『いいの?』

「朝までならな。疲れておるところを追い出すほどワシも悪魔では無い」


おお、助かる。

そろそろログアウトしないとアラームがうるさいんだ。


早速部屋を出て3つ先の部屋へ。


「とりあえず俺とミウロゥで別れるか」

『別れる必要あるの?』

「お父様は私たちと一緒に眠るのです」

「お父様は私たちと一緒をご希望なのです」

「「ですのでお父様。ベッドで一緒に眠りましょう」」


お、おう?

女性と男性で別れるつもりだったんだが……

ズルズルと引っ張られるように部屋へ連れ込まれてしまった。

とりあえず一旦ログアウトだな。

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