第8話
アメリカ合衆国『クライム・シティ』。
犯罪率の高い都市から名付けられた悪名高き街。
其処では一人外に出歩く事は死を意味し、銃撃の音が日常茶飯事であった。
今宵も、多くの犯罪者達が自らの欲の為に銃を握る中。
その男が握り締めるのは、ボウガンであった。
「ひ、ッ、ひぃッ!!」
息を荒げながら薄暗い路地を駆け抜ける。
バーで身売りをしている娼婦を暴漢した中年男性だ。
その男を注意しようとした差別主義者に対し、異能とも呼べる力を使い殺人を犯した。
後に中年男性は逃走し、路地の最中で黒の外套を羽織る男と遭遇したのだ。
「まさか、この俺と同じだとはなッ」
中年男性は所持するスマートフォンを構える。
それは単なる電子機器ではない、現実世界に干渉する異能を宿すアルカヌムである。
「【
声と共に出現する銃火器。
中世を連想させる短小なマスケット銃だ。
中年男性はそれを男の方に構えるのだが。
それでも、外套の男は余裕すら浮かべていた。
「……スキルはそれ以外にも発動している様だな」
距離を保ちながら、外套の男は静かに告げる。
その言葉に、中年男性は心臓の肝を冷やした。
(バカな、俺の【
対象に威圧感を与え、屈服と恐慌を与えるスキル。
これを駆使し、自分以外の人間を支配する事が可能。
何ら能力を持たない者に使役すれば、それこそ無敵の能力だが。
相手との距離を測り適切な位置に立つ黒外套の男は、効果範囲を把握していた様子だ。
それは異能では無く、中年男性を見張っていたが故に理解した距離だった。
「悪政は民衆の反感を買う、悪を挫けと正義を抱く……」
静かに、外套の男は手元に所持するボウガンを構えた。
「俺こそ、正義だ」
銃と弩。
それだけ見れば圧倒的に銃の方が威力が高い。
けれど、そのボウガンは、単なる武器では無かった。
「【
放たれるボウガンの矢。
それと共に、中年男性から放たれたマスケット銃の弾丸。
弾丸と矢が触れた瞬間、その場で強大な爆発が発生する。
「ッ狙ったのか?!」
【
被弾した部分を爆破させる効果を持つ特殊なウェポンスキルである。
対して、【
弾丸を穿つ程の正確な射撃は、外套の男の持つ固有の能力であった。
「リロードッ、もう一発だ」
中年男性が声に出すとマスケット銃に弾丸が自動で装填される。
しかし、その瞬間を外套の男は逃さない。
「『ピカレスク』」
その声が発されると共に。
既に、中年男性の後ろに居た影が出現すると。
その肉体を破壊する一撃を与え、中年男性は声を発する事も出来ず死滅した。
大量の血液が流れる最中、其処には中年男性の遺体と、【皇帝】のアルカヌムが落ちていた。
「流石だな……怪人ピカレスク、……これがレベル20に得る事が出来る『契約』か」
携帯端末・アルカヌムを回収する外套の男は踵を返した。
彼の近くには、明らかに異形と呼べる怪人の姿をした化物が立ち尽くす。
「で、これはどうする?ペイズリー」
ピカレスク、そう呼ばれた怪人は男をそう呼んだ。
本名を告げる事無く、仕事の際に名乗るその名前を、ピカレスクに呼ばせる様にしたのだ。
正義を心に宿し、人を殺す事で世界を救えると考えている殺し屋・
「これを所有する者は、自分の欲の為に他を犠牲にする悪だ、だから、これを使い撒き餌を行う、『皇帝』『恋人』『隠者』『星』『太陽』……これを一か所に集めれば、破壊の為に他の奴らが寄って来るだろう」
故に、ペイズリーはこの五つのアルカヌムを破壊せずに、囮として使用する事に決めたのだ。
「で、場所は?」
「日本だ、平和の象徴で、正義を成す、理想的だろう?」
そして、ペイズリーは日本を地獄に変える事を宣言した。
それが……約二週間前の話であった。
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