第6話


人が二人で入るには狭すぎる風呂場の中。

部屋の中に入ったアリサ・シルプス・アルビオンは静かに式崎荒哉に告げる。


『……さきに、シャワー、浴びて良い?』


『え、お、おぉッ』


と言う事で先にシャワーを浴びているアリサ・シルプス・アルビオン。

対して、式崎荒哉はベッドに座りながら貧乏揺すりをしていた。


(落ち着け……シャワーを浴びてるだけじゃねぇかよ……そうだ、アルカヌムでも見て落ち着くか)


不思議と、自分が所有している愚者のアルカヌムを見詰めると、それまでも焦燥感が嘘であったかの様に落ち着いて来る。


(最初に起動した時に俺の頭の中に情報が流れてきた)


その内容は後からでも見返せる様に『規則ルール』と書かれたシステムアプリが用意されている。

それを起動して内容を確認する式崎荒哉。


『アルカナディア』


参加資格は合計で二十。

『魔術師』『女教皇』『女帝』『皇帝』『教皇』

『恋人』『戦車』『剛毅』『隠者』『輪廻』

『正義』『死刑囚』『死神』『節制』『悪魔』

『塔』『星』『月』『太陽』『審判』

携帯端末、アルカヌムを起動し手続きを終えた者が参加者として参戦出来る。


ゲームの脱落条件。

参加者の死亡。

または、所有するアルカヌムが破壊される事。


所有者が居ないアルカヌムは何度でも契約が可能。

アルカヌムが最後の一台となり、そのアルカヌムの所有者が優勝者となる。


優勝者には、自らの願望を世界に反映させる権利を得る。


(これが、このゲームの凡その内容)


そして。

式崎荒哉は参加者に配布される筈である台数を確認する。


(この中に、俺の『愚者』のアルカヌムは入って無かった、……なんでだ?)


何か特別な事なのだろうかと、式崎荒哉は考えたが、彼の頭では正解に導く事は出来なかった。

それでも、式崎荒哉の頭でも分かる事がある。


(アルカヌムを所持している以上、所有者が死んでも、他の奴がアルカヌムを所有する限りそのアルカナの枠が消える事が無い、って事は、壊さずに持っていれば、仲間を作るのに便利って事だよな)


ただその場合、仲間に渡した時点で殺し合う運命にあたる。

命を捨てても、勝たせたいと思う人物ではない限り、命を捨てる行為には走れない人間が多数だ。

それこそ、アリサ・シルプス・アルビオンの様に、自我の無い命令に従う様な者が量産されていれば、話は別だろうが。


(そうだ……命を懸けた殺し合い、此処で俺は、死ぬ訳には行かねぇ、俺の夢の為に、……馬鹿になってる暇はねぇぞ)


そう自分に言い聞かせる、式崎荒哉。

だが、シャワーの音が止まり、脱衣所で服をタオルで拭う擦れる音が耳奥に届く。

そして、式崎荒哉の元へとアリサ・シルプス・アルビオンが大きめなタオルで胸元を隠しながらやって来た。


「ありがとう、アラヤ、シャワーを貸してくれて」


十分に暖まった彼女の表情はほんのりと赤い。

その姿を見た式崎荒哉は目を大きく見開いて彼女の姿を見詰めていた。


「お風呂から上がったら……一緒に、寝ようね?」


胸元を隠しながらが告げる彼女の言葉には魔性があった。

その言葉を受けた瞬間、式崎荒哉は即刻風呂へと移動したのだった。

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