第3話 魔法少女エメ
セシルと街を散策していると酒場から何やら騒がしい声が聞こえる。
「待ちなさ〜い!」
「待てと言われて待つアホが居るか!」
どうやら食い逃げの様である。
少女は懐から何か取り出すと食い逃げ犯に投げつけた。
刹那、爆発が起き何の騒ぎかと野次馬が押し寄せたが、いつものアレかとすぐ退散した。
「この街の平和は魔法少女エメ様が守る!」
爆薬で食い逃げ犯を爆殺して何が魔法少女かとセシルは思ったが暇なので話を聞いてみた。
「君、魔法少女なのかい?」
「ええ!」
「普段の仕事は?」
「あの〜漫画を描いてるわ」
「何!?」
漫画とは最近、小説に代わる娯楽として発展して来た物でジョンも何冊か持ってる。
俄然、興味が湧いて来たジョンはセシルを置いて食いつく。
「代表作は?」
「最近は朝起きたら魔法少女に成っていた」
「まんまだね。 他には?」
「女王と最強魔法使いのイケない恋事情…」
「あっそれ持ってるよ!」
「あれ売れ行き良いのよ! 何かチョイエロで!」
その最強魔法使いが自分がモデルに成ってる事をジョンは知らない。
「いやあ先生と知り合いに成れるなんて良い日だ!」
「先生だなんてよしてよ〜」
「して漫画の先生が何故、魔法少女の真似事を?」
「あのね…昔から憧れてたんだ〜魔法少女。 だからやってみる事にしたのね」
毎回、犯人を爆破してるので当局からマークされているらしい。
このままではイケない!
ジョンの脳裏に最悪の結末と最高の解決策が思い浮かんだ。
「本当に魔法少女に成りたいんだね?」
「うん」
「それは、年齢的に無理があっても叶えたい願いかい?」
「失礼ね! まだ二十代よ!」
「相当、無理がある」
セシルも会話に加わって来た。
「なら、その願い叶えようじゃないか」
「へ? 叶うの」
「僕と一緒に来て欲しい」
そうしてジョンの家に戻ると何やら漁り出すジョン。
「アンナ! ココにあった指輪知らないかい?」
「その辺の小物なら棚に仕舞ってますよ」
棚を漁るとジョンは指輪を一つ取り出した。
「これが魔法少女の証さ」
「これが…魔法少女?」
「嵌めてみて」
「うん」
何も起きない。
「魔法少女に成りたいと強く願うんだ!」
「う〜ん!」
パーパーチャララ♪
軽快な音楽と共にエメが光り始める。
すると衣装が魔法少女のそれに変わり手には弓が握られて居た。
「凄い! 魔法少女だわ!」
「これはね昔、偏屈魔道具職人から貰ったんだけど、平民にも魔法を! をモットーにしてたから普通の魔法使いには相手にされず価格も高価だったから平民にも売れないから貰った品なんだよ」
「弓は良いけど矢は?」
「念じてごらん」
「出来た!」
「但し、勿論だけど注意点もある」
「どんな?」
「魔力の代わりに体力を元にしてるから、体力が切れると終わりさ。 変身を解いてごらん」
「こう?」
変身を解くと全身筋肉痛で倒れた。
「ね? 偏屈でしょ?」
「でも…これで魔法少女…グヘヘヘ」
「気持ち悪い」
セシルは辛辣だ。
「それともう一つ指輪を渡すね」
「これは?」
「ピンチになったら指輪に祈ると良い…まあ、おまじないさ」
全身の怠さを引きずる様に帰って行ったがジョンは彼女が必ずヘマをやらかすと予見していた。
その夜、早速魔法少女として、片っ端から悪人を成敗していたエメだが、ある集団に出くわした。
次々と襲い来る相手に体力が尽きてしまった。
もう駄目とジョンが言って居た指輪に祈るとそこに黒いコートを来た男が現れた。
エメが顔を上げるとジョンだった。
「得物の性質を考えなよ…弓なら距離を取りつつ戦うだろう」
「ジョン! 危ない!」
「なんだコラ!」
「通りすがりの魔法使いさ」
あっという間に十数人程、倒してしまった。
へたり込むエメを抱えると闇夜を飛んだ。
「君の家は?」
「あの辺りだけど…」
「今日はもう大人しくすると良い。 僕も間に合うとも限らないからね」
「どういう事?」
「最後に渡した指輪は僕に繋がっている。 それが答えだ」
力を手にすると人間、慢心する物だ。
分かりきって居たジョンは先手を打った。
それだけだ。
彼女を家まで送り届けるとそのまま闇夜に消えた。
「どういう事か説明する!」
セシルはカンカンだ。
「ちょっと魔法少女を救ってきた」
「夜遊びは禁止!」
「元暗部には夜遊びが似合うのさ」
ゲシッとセシルに蹴りを入れられた。
その後、エメが家を訪ねて来た。
「その節はどうも…」
「間に合って良かったね」
「実は相談が…」
「ん?」
「怖い人達に家がバレて帰れないんです〜!」
正直、自業自得だが相談されたら放って置く事も出来ず、仕方ないとばかりに出掛けようとすると、帰って来たアンナが一言。
「表に人相の悪い人達が居たので制圧しときましたよ」
「あっ! それ私の!」
元銃士隊アンナはメイド服の下に武装もしている戦いもこなすメイドなのだ。
並の魔法使いも相手に成らないだろう。
「しかし、今アンナに偵察に行って貰ったけど、まだまだ居るね」
「ふぇ〜ん! ココに置いて下さい!」
「無理帰れ」
セシルの冷たい一言だが、ほとぼりが冷めるまでならと置いてやる事にした。
そしたら家が燃えてたらしく、結局ジョンの家に転がり込んだ。
「今日からよろしくお願いします〜」
「チッ!」
「約束の事なんだけど…」
「はい! 原稿があがったら真っ先にジョンさんに見せます!」
「次回作は?」
「今回の件を漫画にします!」
「ん?」
「街の平和を守る魔法少女がピンチに成った時に颯爽と現れる謎の魔法使いとの恋愛を…」
「ま…まあ脚色が入るなら…」
それがヒットし一躍売れっ子漫画家と成ったエメはリアリティの追求と言う名目で未だにジョンの家に居ついている。
魔法少女も健在だが、根本的に戦闘を理解してないエメをアンナが軍隊式に鍛えている。
「馬鹿者! 何処を狙っている!」
「ふぇ〜ん! すみませ〜ん!」
基本的にエメが面倒事を持ち込むので、元暗部の情報網で敵組織の殲滅を裏でジョンがしている。
そんな中、アンナがさらわれた。
敵は中規模と言った所の半グレ集団だ。
一人で来る様にとご丁寧に置き手紙が残されて居たのでジョンが行く事にした。
「そんな! アンナさんが! 私も…」
「邪魔だよ…この件には首を突っ込むな」
敵が指定した倉庫へ向かうとアンナが縛り上げられて居る。
「お前か最近、調子に乗ってるのは?」
「だったらなんだって言うんだい?」
「バラすに決まって…」
「もう僕の間合いだよ…ライトニング」
瞬時に雷魔法で相手の得物を弾き飛ばすとアクセル、加速魔法でアンナを助ける。
後は凄惨そのものだった。
二度とマトモに飯が食えない程に痛めつけるとアンナの猿くつわを解いてやる。
「ここまでやる必要は…」
「悪党に情けは無用だよ」
ゴトッ…
後ろで音が鳴ったのでジョンが振り向くと魔法少女に変身したエメがへたり込んで居た。
「ひぃ!」
「やれやれ…帰るよエメ!」
「ハヒィ!」
帰り道、エメは話し辛そうに語りかける。
「戦いって恐ろしいんですね…」
「そうだ…君はその命を対価に出来るかい?」
「私には無理そうです…」
「なら敵は選ぶ事だ」
ジョンはそれ以上、何も語らなかった。
「おーし! 今回の件も漫画にするぞー!」
「懲りてない…一度殺す」
「まぁまぁ」
セシルは相変わらず冷たい。
しかし、エメの心境に変化が現れた。
ジョンを本当のヒーローに思えて来たのだ。
出来れば次は自分が…等と考えてしまう。
危険な出来事を共有すると恋に落ちるアレだ。
「原稿あがりましたよ〜」
「どれどれ」
今回は悪の組織に捕まったヒロインが謎の魔法使いに救われる話の様だ。
ご丁寧にキスシーンまである。
「どや!」
「まあ、良いんじゃないかな?」
少女にはウケそうだろう。
エメは自分とジョンの事だとは言わない。
あの時、自分がさらわれたら良かったのにと心に秘めている。
そんな事、つゆ知らずジョンは漫画を読み進めて居る。
「そういえば、あの偏屈職人は生きてるかな?」
「指輪を造った人ですよね?」
「様子を見に行ってやろう」
店に着くと相変わらず寂れている。
「親方〜生きてる?」
「なんじゃい! その言い草は!」
「お土産にパン買って来たんだけど…」
「何! 寄越せ!」
相変わらず売れて無さそうだ。
「何か買ってけ!」
「う〜ん、それより商品を売り込んで来てあげようか?」
「何?」
そして王宮へと向かっている。
「いきなり女王陛下と謁見とは無茶苦茶ですな!」
とりあえずコンスタンを通し女王に商品を売り込む。
「あの、良さが分からないのですが…」
そんな物、魔法使いがすれば良いでは無いかと女王は思った。
しかし、ジョンも承知の上だ。
「例えば、銃士隊の装備に加えれば疑似的に魔法使いが作れます」
「それは本当ですか?」
「エメ、変身してみて」
「はっはい!」
エメが変身すると瞬時に弓矢の装備が現れた。
これは確かに疑似的に魔法使いと言える。
「成る程、確かに銃士隊の装備としては一考ですわね」
「銃士隊に限らず、装備の軽装化とも成れば普通の平民の兵にも喜ばれます」
「分かりました。 一先ず銃士隊の分だけ購入致しますわ」
「在庫はあるので、すぐ納品出来ます」
商談をまとめて寂れた店に戻り親方に報告すると小躍りして居た。
「弓以外にもあったよね?」
「剣も槍も鉄砲もあるわい!」
「この際、まとめて売るよ!」
「アヒャヒャ!」
「セシルにも…僕からのプレゼント」
「嬉しい…でも何故?」
「魔力切れを起こした時の保険さ」
魔力切れを起こした魔法使い程、使い物に成らない物は無い。
例え、僅かでも生き残る可能性があるなら、それに越した事は無い。
セシルにはライフルの指輪をプレゼントした。
「セシルも変身してみてよ」
「分かった」
相変わらず軽快な音楽から変身するとセシルの金髪に似合った黄色い衣装だった。
ライフルをエメに構えるセシル。
「おいおい」
「お前を殺す」
「そんな! 同じ魔法少女じゃないですか!」
無慈悲に店の中で乱射すると親方が叫ぶ。
「やめてくれ〜!」
「私も負けないんだから!」
エメも変身して弓矢を乱射し始めたから店内は騒然と成った。
それを止めたのは以外にもアンナだった。
「もう! 今晩の食事抜きますよ!」
「それは困る」
「お腹空きました〜!」
「あっアンナにはこれを」
もう、この際だから全員に配ってしまえとアンナには刀の指輪をプレゼントした黒髪に刀は勇ましい。
アンナも満更でもない。
「もう帰ってくれ! 儂は仕事で忙しくなる!」
バタンと追い出されたが、まあ元気そうで良かった良かったとジョンはまとめた。
さて、商談の続きだが元から鍛え上げた銃士隊からのウケがよく正式兵装として採用された。
ただ、衣装だけは何とかして欲しいとのクレームが入り、そこは訂正された。
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