第4話 セシルの山籠り
セシルは一人、森の中に居た。
時間は少し戻る。
「山籠りに行ってくる」
「そ? 気をつけてね?」
「もっと引き留めて欲しい」
「君が無計画に山籠りなんてしないだろう?」
「むふー!」
「お弁当はどうしましょう?」
アンナもすぐ帰ってくるだろうと支度しようとするが、セシルは最低限の水と携行食で良いと言う。
「無理はしない様に」
「分かった」
こうしてセシルの山籠りが始まった。
まずセシルは魔法の使用を極力禁じた。
精々、火を起こす程度だ。
その上で得物はジョンに貰ったライフルとナイフのみとした。
前回の王国魔法祭での魔力切れが許せない。
何故、ジョンが自分にライフルを渡したのか考えてみる。
一見すると適当だが全て計算づくだ。
まず体力が持つなら弾切れが無い。
いざと成れば棍棒代わりにも出来るが自分の体格では負けてしまうだろう。
ならば距離を取っての銃撃戦が一番生存率が高い。
弓矢より早く獲物に到達する武器として渡されたのだ。
と言う事は正確な射撃技術が要求される。
今回、それを身に付けるつもりだ。
「この衣装どうにかして欲しい」
魔法少女の格好で山籠りをしなければ成らない事に自分で呆れる。
まずは、止まった的目掛けてライフルを撃ってみる。
当たらない。
まず、ここからかとセシルは嘆息する。
「むふー!」
暫く止まった的目掛けて撃つ訓練が続いた。
ようやく当たる頃には、携行食が尽きて居た。
食料調達もせねば成らない。
最初は罠でウサギを狩った。
物資の現地調達も暗部の時に身に付けている。
「久しぶり」
肉にかぶりつく魔法少女の様子は滑稽だが、訓練は真剣そのものだ。
まず、ぶつかった壁はやはり体力だ。
この魔道具は魔力の代わりに体力を使うので、最初は精々、数発撃てば、もう息切れを起こす。
「鍛える」
軍隊式の鍛錬で、ひたすら体力を鍛える。
「ジョンの為に!」
いざと成ればジョンの盾に成っても構わないと思う程、セシルの愛情は深い。
その愛に応えるかの様にメキメキと体力が鍛えられた。
「二十は撃てる!」
そして、使ってて気づいたのだが別に一丁だけしか出せない訳でも弾が決まってる訳でも無いらしい。
重さも殆ど感じない。
気づけば二丁のライフルを両手に持ち的に命中させられるまでに成って居た。
山籠りして幾日経っただろうか?
ジョンとエメがくっついてたら撃ち殺すつもりだが、とにかく次は動く的だ。
鳥を狙うも当たらない狐も当たらない。
「どうすれば…」
これは数をこなす他無かった。
一日的を外しては寝床に戻る日々が続いた。
その内、獲物の未来が予測出来る様になって来る。
極限の集中の中、ようやく獲物に当たり出した。
「良し」
更に訓練を続けると外さない様にまでなったと同時に撃てる弾数も増えた。
獲物を回収する最中ビックベアに襲われたが、一瞥もしないで撃ち殺した。
「最終仕上げに入る」
確かな手応えを感じたセシルは、仕上げとしてゴブリンの集落を襲撃した。
恐れを知らぬゴブリンは陸の津波、次々と襲い掛かってくるが、二丁のライフルで次々と始末して行く。
「今なら矢も撃ち落とせる」
ライフルで矢を弾きながらゴブリンを殲滅した。
「任務完了」
帰路に着いたセシルが家に到着すると、まず身体をアンナに拭かれた。
みんな口には出さないが臭いが凄いのだ。
ようやくキレイに成って、みんな口を開いた。
「おかえり」
「おかえりなさい」
「オラオラオラオラ!」
一人おかしい人間が居るが締め切り間近のエメが奇声を発しながら執筆していた。
「ご飯」
「はいはい、すぐ用意しますからね」
ようやくマトモな食事にありつけたセシルも満足気だ。
すると眠気が来たらしく、ベットに潜り込んだ。
「さて彼女はどんな鍛錬をしたのか…」
「わかりませんが一ヶ月近く出てましたね」
「出来たー!」
「やれやれ騒が…」
バンッ!
ベットからエメの頭部スレスレに弾丸が飛んだ。
「やかましい」
「…はい」
「成る程…ライフルか」
「ライフルの訓練でしたら銃士隊の私でも指導出来ましたのに」
アンナはそう言うが、セシルの目指す所は、それ以上だったのだろう。
起きるなりジョンに模擬戦闘を申し込んで来た。
「私頑張った!」
「じゃあ僕は攻撃しないよ」
魔法少女へ変身し両手にライフルを構える。
ジョンが相手なので構わず狙い撃つ。
「凄い!」
「山籠りの賜物!」
まるで踊る様に撃つ様にジョンも驚嘆する。
「これでおしまい」
「凄いですわ! セシルさん!」
魔力切れの時の準備も万端と成ったセシルだったが、まだ物足りないと言う。
「偏屈の所に行く?」
「違う、近距離格闘をマスターしたい」
「それはライフルを併せた?」
「うん」
「分かった僕も協力しよう」
そこから更にセシルの格闘術は洗練されて行った。
魔法少女…あくまで魔法使いでは無く魔法少女としてのセシルが完成した。
「凄いですわ…私も同じ魔法少女として!」
「先生は執筆頑張ってね」
「う〜締め切りが憎い〜」
売れっ子漫画家として締め切りがキツイ。
しかし、今のセシルを見て閃いたらしく、新キャラを追加する事にしたらしい。
因みにアンナは既に追加されている。
「三人と言うのも物足りないですわね〜後二人程…」
「二人も用意するのかい?」
「いや〜五人位居た方が盛り上がるってか」
「二人か…なら最初から土台が出来てる方が良い」
また王宮へと向かうジョン。
途中の衛兵も直接、女王陛下と謁見してる事は知ってるので止めない。
「またですかな…」
コンスタンも諦め気味だ。
「今日のご用は何でしょうか?」
「単刀直入に言います。 銃士隊から魔法少女を出して下さい!」
「魔法…少女?」
ジョンは世にはびこる悪を説いた上で直接、裁く魔法少女の存在の必要性を訴えた。
「しかし、それこそ銃士隊の仕事では…」
「それだけでは不十分です」
ジョンは特殊部隊の必要性を説く。
「二人だけで良いんです!」
「まあ…二人位でしたら…」
無茶苦茶な説得の末、魔法少女を二人得たジョンは早速、魔法少女達の再編に乗り出した。
とりあえず紹介だ。
「銃器担当のオレリアです…」
「槍担当のベアトリスだ!」
「君達にはこれから直接、その場で悪を裁いて貰うジャッジメントルールが適用される」
「ジャッジメントルール…」
「個々の采配でギルティだった場合は殲滅して構わない」
「良いね〜分かりやすい!」
「なんだか燃えますわ〜!」
「先生は執筆メインで」
「はい…シクシク」
「他に決まりは?」
「君達は一応、銃士隊の管轄に入る事に成った。 そこは理解して行動して欲しい」
「私も?」
「セシルは管轄が違うが他の魔法少女が苦戦してたら先輩として援護して欲しい」
「分かった」
「私も先輩として…」
「君が一番、戦闘力が低いだろう」
「はい…」
とことんエメには冷たい。
漫画家としての才能はあっても魔法少女としてはイマイチなのだ。
しかし、四人と一人の魔法少女の存在は強烈な抑止力と成った。
「ジャッジメントルール適用! ギルティ!」
「魔法少女が現れたぞ! 逃げろ!」
「逃がしません…」
「ぐわあ!」
これには女王陛下もご満悦で銃士隊全員を魔法少女にしようとした所を宰相に止められた。
「オラオラ! どやさ!」
「ん? どれどれ」
そこには五人の魔法少女が最悪の魔法使いに挑むシーンが描かれて居たがジョンの注目した所はソコでは無い。
「このシールドみたいなのは?」
「はい? そりゃ魔法少女も守りが必要でしょう?」
「魔法少女も守りが必要か…ちょっと出てくる」
そして例の偏屈職人の所に来ている。
「何? 敵の魔法から守る魔道具じゃと?」
「当然、魔法使いも相手にする訳だから必要でしょ」
「う〜む」
偏屈職人も考え込む。
「出来ねえ事はねえが精霊石の力が居るな」
「成る程…で具体的にどの精霊石さ、水は難しいよ」
他の精霊石は採掘で手に入るが水の精霊石は水の精霊と契約した魔法使いの専売特許だ。
価格も高い。
「ふむ、風の精霊石はどうだ? 矢とか鉄砲も弾き飛ばすぞ」
「価格も手頃だしね。 決まりだ。 今すぐ造って」
「今すぐって…まぁお前には貸しがあるから急ぎで造ってやらあ」
「ありがとう」
暫くして、防御用アミュレットが届き更に魔法少女達は活躍しやすくなった。
ついでだが、魔法初心者用の装備として、このアミュレットも売れる様に成ったので職人もウハウハだ。
もっとアイデアを持って来いとジョンに急かす始末だ。
「しっかしよ〜こうも上手く行くもんかね?」
ベアトリスは疑問を投げかける。
「勘違いしないで欲しいんだけど、君達が勝てるのは、精々ツーカードまでだからね?」
「それ以上も倒して来たぞ?」
「それはチームワークがあって装備の力があったからと言うのを忘れないで欲しい」
ジョンが相手なら瞬殺している。
慢心はいけないとジョンは魔法少女達に説く。
「そうですよ…実際、危険な場面もありましたし…セシルさんの助けも…」
オレリアは冷静だ。
セシルレベルなら相手の詠唱が完成する前に撃ち殺す事も可能だが、そもそも魔法が使えない彼女達が相手が一体、どの魔法を詠唱しようとして居るのか分かるまい。
それに王立魔法隊でも特殊部隊に属する連中なら、口を殆ど動かさない…つまり詠唱を隠す。
ジョンなら、それでも詠唱が間に合うが彼女達は対応が遅れるだろう。
だからこそのアミュレットだが限界がある。
「まず、君達の任務は哨戒と宣伝だ。 それ以上は銃士隊の管轄と成る事を肝に銘じて欲しい」
「客寄せパンダってか?」
「人々の希望の象徴だよ」
「けっ!」
「全く! 本当の魔法使いの戦いを知らないから軽口が叩けるんだよ?」
「なら本当の魔法使いを出してみろよ!」
「分かった…僕が出よう」
かくしてジョン対魔法少女全員の試合が始まったが最初に手加減したら殺すと言い聞かせてある。
「えっと! 試合始め!」
「オラオラ!」
ベアトリスは威勢良く飛び出すがジョンは軽く躱すと一言。
「寝てろ」
ドンッ!
「ガハッ!」
魔法すら使って無い。
続いてオレリア達が距離を取り射撃してくるが、一瞬で予測したジョンは距離を一気に詰めると手刀で一撃。
一瞬たじろんだアンナは軽く顎を叩かれ落ちた。
残ったのはセシルだけだが、ギブアップ。
魔法が使えないならセシルに勝ち目は無い。
「ちっきしょー!」
ベアトリスは悔しがっているが他は意気消沈として居る。
魔法すら使って貰えなかったのだ。
「この借りはいずれ返す!」
ベアトリスは再戦の約束を取り付けて仕事へ戻って行った。
次の更新予定
2026年1月10日 16:00
風の最強魔法使いジョーカー 桜井悠人 @cabashirayunomi
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