第2話 王国魔法祭
ぐだぁ…二人はだらけている。
「もう! 掃除の邪魔なんで向こうに行ってて下さい!」
使用人のアンナにも怒られる始末だ。
しかし、暗部として働いていた二人に普通の日常を送れと言うのも無理がある。
そんな時、ドアがノックされた。
アンナが対応するとコンスタンだった。
フードを目深に被り二人の家にたどり着くと、ようやくと言った具合にフードを取った。
「久しぶりですな」
コンスタンはと言うと書類の整理や王宮の目録作りで二十四時間働いて居るらしい。
二人は宮仕えも暗部より扱いが酷いと思った。
そんな二人にコンスタンは女王陛下から言伝を持って来たと述べた。
「ずばり、王国魔法祭に出場する様にお達しですな」
二人は即答で断った。
「面倒だよ」
「働いたら負け」
「これは言伝と言う名の勅命ですな…断る余地は無いのですな」
女王陛下としては、暗部で働いて居た二人に日の目を当てるつもりだが、二人のやる気はまるで無い。
「じゃあまたね」
「また春に来い」
「いや、だから勅命なんですって」
イヤイヤする二人をどうにかこうにか宥め、出場を取り付けたコンスタンは王宮の仕事より大変だと思った。
さて、年に一度の王国魔法祭、お祭りムードが街を包む中、屋台で楽しむ二人。
セシルはデート気分で小物などをジョンにねだる。
「はいはい」
キラキラした安っぽい指輪にセシルの目は輝く。
一方、他の出場者はピリピリしている。
街ゆく人々でも誰が出場者か分かる位だ。
「みんな大変だね~」
「働いたら負け」
セシルとしては、そこまで大会へ興味が無いので労働に等しい。
さて、大会へのエントリーを済まし控え室へ向かうと二人に視線が集まる。
今まで見た事も無い新参者かとすぐ視線が外れたが隅で瞑想する者、ブレードの素振りをする者、それぞれ多種多様な方法で集中力を高める中、二人は先程の屋台で買った焼き鳥などを食べているのが一人の目に留まった。
「お前達、嘗めてるのか?」
「串は舐めないよ?」
「気に要らねえ!」
ジョンを絞め上げると仕置きとばかりに投げ飛ばそうとするがビクともしない。
やがてジョンの顔を見ると男は恐怖した。
醸し出す雰囲気が纏う殺気が先程と違うのだ。
転げる様に後ろへ後退りすると男は逃げた。
「やれやれ」
「やり過ぎ」
「素手でも殺れたけど試合前だからね」
一連のやり取りを見て居た出場者達にもジョン達が普通の魔法使いでは無い事を理解した。
さて、第一試合は早速、盛り上がりを見せた。
飛び交う魔法に観客達も歓喜した。
やがて試合も進みセシルの番が来た。
「すぐ帰る」
「頑張り過ぎないでね」
ジョンとしては、手加減しろと言う意味合いだが、セシルにその気は無い、サッサと済ませて帰るつもりだ。
セシルの試合、早速ゴーレムを造ると相手を叩き潰しに掛かるが、相手は空に逃げる。
「ゴーレムなど空では役に立つまい!」
「やれやれ…みんなそう言う」
セシルのゴーレムは上に向かって拳を上げると錬金で形を変えた。
砲台だ、打ち出される弾はブドウ弾。
無数の弾が打ち出され安全な空へ逃げたはずが、一撃食らえば落ちて死ぬ状況に成った。
無数のブドウ弾は観客席へも落ち、王国魔法隊達がシールド系の魔法で守る始末。
男も何時までも避けきれる物でも無く、ブドウ弾の直撃を受け落下した所にセシルのゴーレムの一撃で試合会場から吹き飛ばされ再起不能と成った。
帰って来たセシルにジョンはやり過ぎだと怒るが面倒だったの一言で終わった。
対するジョンは…遊んで居た。
相手の得意魔法を即座に見抜き真似して、どっちが上手く使えるかで遊んで居た。
くぐって来た修羅場が違うのでみんなジョンに遅れを取る始末と手の内が分からないので他の参加者からも警戒される存在と成った。
そんな中、セシルが負けた。
一時は優勝候補と目されたが、アクセル…加速魔法の使い手相手に魔力切れで負けたのだ。
試合も壮絶な物でゴーレムの拳を爆薬に変えて会場を吹き飛ばしながらの試合と成ったが、尽く躱されたのだ。
一番悔しがったのはセシルだ。
暗部での敗北は死に直結する為、死んだに等しいのだ。
それでも、セシルの驚嘆すべき魔法に賛辞が送られた。
さて、ジョンはと言うと、少し苦戦していた。
雷魔法の使い手に手を焼いて居たのだ。
とにかく発動から到着までが速いのでジョンでなければ一撃は喰らって居るだろう。
「どうした!何も出来ないのか!」
「君も雷魔法は手慣れてるねぇガードが堅い」
「ふん!我が一門に属すれば当然の事!」
「なら真似はやめだ。 ほんの少し僕の魔法を見せてやろう」
そう言うとジョンは極小のウィンドブレイクを無数に生成すると男に向かって放った。
当然、追尾式で始めは小ささに男は嘗めていたが、それが際限無く無数に来るとなると話が変わって来る。
ガードし切れない部分は抉れ、それが更にガードを遅らせ完全に押し切られている。
ジョンとしては負けを認めるまで続けるつもりだったが、看板を背負う男は負けを認め無いので、殺す事にした所で審判の止めが入った。
初めて見せたジョンの魔法に風属性である事が知れたが、所詮は基本魔法の応用…ジョンの実力を完全に計るに至らず、しかしかなりの使い手である事は知れた。
「疲れた」
「セシルが疲れてどうするのさ」
魔力切れのセシルはとりあえずポーションで魔力を回復させて居る。
「次は奴」
「ああ君の相手だった男か」
アクセルの使い手の男は魔力切れ狙いだけかと思いきや、そこに体術も加わり中々に手強い。
「じゃあ行って来るよ」
「早く帰って来い」
「はいはい」
さて、試合会場へ向かうと早速、アクセルの洗礼に遭ったが、そこはジョン…同じくアクセルの魔法で高速移動で高速戦闘を行うので観客からは、まるで何が起こって居るか分からない。
体術なら暗殺にも使って来た。
実戦に次ぐ実戦で叩き上げられたジョンの体術に男もまた負ける事に成った。
さて、ここまで対戦相手の名前すら挙げて無いのだが正直、ジョンの相手に成るのは優勝候補第一位ベルトラン位なのだ。
セシルは若干の経験不足故に負けたが、ジョンに隙は無い。
ここまで余裕を持って勝ち上がって来た。
いよいよ次は決勝戦だ。
相手はやはりベルトランだった。
火炎魔法の使い手で見た所、火のアレクシより実力は上だ。
試合会場で対峙すると、まず会話から始まった。
「貴様がジョーカーなのだろう?」
ジョンは暫くの沈黙の後、認めた。
「こんな青年とは…名前も偽名だろう」
「だったら何が問題なんだい? 互いに対峙して間合いに入っている…お喋りに来たのかい?」
「これは警告だ。 嘗めて居るなら…」
ボッ!
ジョンのウィンドブレイクが放たれた。
実力は知れて居るので、一切の油断は無い。
「実力を認めたか!」
向こうも嬉しそうだ。
火炎の鞭を使い応戦する。
ブレードの魔法で即座に応戦するが中々に自在に来る火炎の鞭は手強い。
ジョンは悩んで居た…どこまで本気でやれば良いのかと…かなりの使い手と認め、それなりの本気を見せてやる事にした。
「行くよ」
「来い!」
特大ブレードでの応戦にベルトランも笑う。
「桁違いだな…しかし!」
ベルトランは極小のファイアブレイクを無数に作成するとジョンに放って来た。
この技の答えを見せろと言う事だ。
「嫌味だな」
「さあ! どうする!」
「基本魔法だって事、忘れてない?」
ジョンはウィンドストームで竜巻を作成すると周囲を吹き飛ばした。
「攻撃魔法を防御に使うか!」
ウィンドストームも中級魔法だがジョンのソレは規模が違う。
攻防一体の技と成り、ベルトランも防御する。
「ならこれでどうだ?」
ファイアストームの火炎放射でジョンを追い詰めるもヒラヒラと躱すジョンにベルトランは楽しげだ。
このベルトランも戦う相手に困って居たのだ。
しかし、今は全力を出せる相手が目の前に居る。
こんなに楽しい事は無い。
「ウィンドアロー!」
「ぬう! 隙間を狙うか!」
隙の多い技から、互いに隙が小さい技へと移行する。
ベルトランは盾に火炎を纏わせると、バッシュを仕掛けてきた。
体格差を活かした攻防一体の技だろう。
「レイジングストーム!」
前方へ風の刃を地面から突出しベルトランを防ぐ。
この瞬間、ジョンはこの国一位の魔法使いを認めた。
一部、本気を解禁する事にしたのだ。
「行くよ」
「ブレードなら先程…ぬう!」
「特大のウィンドウィップだよ」
ガードを回り込む様に特大の鞭がベルトランに迫る中、咄嗟にベルトランはファイアバッシュで弾き飛ばした。
「ウィンドボール」
自ら風の刃を纏わせ追跡し始めた。
「答え合わせは?」
ジョンの嫌味にベルトランも笑う。
自らも火炎を纏わせジョンに突っ込んで来た。
つくづく負けず嫌いだなとジョンは思ったがベルトランは気にしない。
ここまでは互角だがジョンはまだ本気ではない。
「さあ、受けてみろ! ウィンドブレイク!」
極小では無く特大のウィンドブレイクの乱射にベルトランも横っ飛びで躱す。
ジョンが本気を出して来た。
ガードもへったくれも無い技を繰り出し始める。
「逃さないよ、ウィンドアロー!」
無茶苦茶な量のウィンドアローが放たれるが、咄嗟にガードするベルトランにいよいよジョンの本気が放たれる。
空に舞うと詠唱を始める。
「潰れろ…ウィンドブレイク」
超特大の風の玉を試合会場を包む程に放った。
「ぬぅぅぅ!」
「耐えるか…ならばフレア」
火と風の合わせ技の特大火球に咄嗟にベルトランは飛翔魔法を真横に使い試合会場から飛び出した。
あんな物、一人間がどうにか出来る物では無い。
しかし、試合会場が吹き飛んだので、境目が分からないジョンは更に追尾する。
「メテオ」
超高熱の岩石を風で加速させて馬鹿げた威力の魔法をベルトランに放つ。
本気に成って来たジョンは破壊し尽くすつもりだったが止めたのはセシルだった。
咄嗟に全力のゴーレムでメテオを受け止めると試合終了を知らせた。
さて、表彰式だ。
女王陛下から直接、杖が手渡されジョンは置いて帰ろうとしたので女王陛下の顔がヒクついてた。
慌ててアンナが持ち帰ったので事なきを得たが、あのままなら死罪物だ。
さて、ジョンの名が知れ渡ってしまったが、偽名なので問題無いだろうと思って居たがセシルは納得しない。
「本当の名前教える!」
「忘れたよ…この仕事をする様に成ってね」
「セシルさん? ジョンさんはジョンで良いじゃ無いですか、名前なんて他人が呼ぶ物ですし」
「むふー!」
それでも気に入らないセシルは、なら名前を付けてやると言い出した。
「ジョニー! それが貴方の名!」
「あんまり変わって無いな」
「やっぱりジョンさんにしましょう」
「むふー!」
「それより食事にしよう」
「優勝記念に腕によりをかけますね!」
夕食は賑やかな物と成った。
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